ホンダ八郷社長「英から世界供給、EU離脱後も維持」英国が欧州連合(EU)から離脱(ブレグジット)する2019年3月末まで半年を切った。英国では多くの完成車メーカーが操業しているが、英国とEUで離脱の詳細な条件について合意に至っていない。離脱後の物流や生産面への影響が懸念されるなか、完成車メーカーは問題をどう捉えているのか。英国に工場を持つホンダの八郷隆弘社長に話を聞いた。 ■米中で欧州勢と対抗 ――ブレグジットを巡り「合意なき離脱」への懸念が強まっています。 「『合意なき離脱』により何が起きるかは分からない所が多い。先行きを懸念している。一時的な混乱はあるのではないか。そうした混乱が起こらず回避できるよう、問題が解決に向かうことを望んでいる」 「欧州は世界の自動車文化の中心地だと考えている。ホンダとしても欧州でしっかりと競争力を担保していきたい」 「ホンダの2大市場である米国と中国、両市場とも欧州の自動車メーカーが強く、ホンダはかなりの競合関係にある。その意味でも欧州車メーカーに対してしっかりと競争力を担保できるようにすることが重要になる」 ――ホンダは欧州での販売シェアが1%以下と苦戦しています。 「英工場は主力車種『シビック ハッチバック』のグローバルでの生産拠点だ。同車種を集中的に英国で生産し、欧州だけでなく米国などにも供給する枠組みを整えた。今後も基本的には、この枠組みを継続できるように検討したい」 ――ブレグジットはホンダの今後の欧州事業にどう影響しますか。 「ブレグジットが最終的にどういう形で決着するかが見えない中で事業に及ぼす影響を見極めるのは難しい。英工場はEUだけでなく、グローバルの車両供給拠点として機能している。ブレグジットの問題だけに、英工場の今後が影響されるわけではない」 ――自動運転車の無人ライドシェアの分野で米ゼネラル・モーターズ(GM)との提携を決めました。 「GMとはウィンウィンの関係にある。交通事故ゼロや排出する二酸化炭素(CO2)ゼロの社会を実現する所で。これまで燃料電池車の基幹部品であるスタックや、北米向けの電気自動車(EV)用の電池で組んできた。だが、他のパートナーともウィンウィンの関係がつくれるのならば進めたい。自動車メーカー同士で資本提携する必要性は考えていない」 ■F1参戦、消費者の共感呼ぶ ――自動車産業は自動運転や電動化といった転換期にあります。研究開発費もかさむ中、多額の費用を使って自動車レースのフォーミュラ1(F1)世界選手権に参戦を続ける意義は何ですか。 「F1はモビリティー企業であるホンダのチャレンジスピリットを象徴するものであり、DNAでもある。若手の技術者にとってマネジメントを学ぶ場にもなる」 「ホンダはこれまでF1の活動を通じて多くを学び、成長につなげてきた。F1を通じて、F1に直接関わってない社員も応援してくれる。全社の一体感を醸成できる」 「ホンダがレースで戦う姿を見て、消費者の共感も広がる。長期経営計画『2030年ビジョン』では『全ての人に生活の可能性が拡がる喜び』を掲げた。その達成に向けて応援されるホンダを目指す上でもF1の位置付けは重要だと考える」
■「合意なき離脱」影響計り知れず
英国は欧州を代表する自動車の輸出大国だ。日本貿易振興機構(ジェトロ)が3月にまとめたリポートによれば、17年の生産台数は174万台でその8割は輸出されている。日系メーカーではトヨタ自動車と日産自動車、ホンダがそれぞれ工場を持つ。日産の多目的スポーツ車(SUV)「キャシュカイ」を筆頭に、多くが英国外へと出荷されている。 nikkei.com(2018-10-20) |