インタビュー/本田技研工業社長・八郷隆弘氏 「自動運転やモーター、より良いもの届ける」
ホンダが他社との協業を相次いで発表している。完全自動運転と人工知能(AI)の研究ではそれぞれ米グーグル、ソフトバンクと組み、電動車両の基幹部品であるモーターの開発・生産では日立製作所と提携した。八郷隆弘社長にその背景を聞いた。
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―他社との提携発表が相次いでいます。
「社内の開発現場が課題解決を議論する中で協業の提案を上げてくる。就任以来、ボトムアップの環境作りを意識してきたが、それが最近の発表につながっている。先進領域の戦略や方向感は現場の方が感度が高い」
―開発部門には自前主義へのこだわりもあると思います。
「当然異論は出る。だが重要なのは何のために他社と組むのかを議論することだ。相手と信頼関係を築いて互いに高めていけることが理解できれば、孤立するより協業した方がお客さまに良いものを届けられるという結論になる」
―ご自身で異論をなだめることはありますか。
「私がなだめるというより、本当に他社と組むことでいいのかと聞く方が多い。現場の覚悟を確認するためだ。なんでもかんでも聞き入れるわけではないが、全部自前で良くなるとは思わない」
―ホンダの車づくりで、ここは譲れないというコアは何ですか。
「デザインと移動する楽しさだ。電動化で言えば、モーターや電池などの要素技術をどう組み合わせて車をどう制御するかの技術が重要になる」
―協業を広げるとコアは狭まりませんか。
「信頼できる相手とコアを広げることが今のチャレンジ。電子化など車の進化に伴い、新たな業種のサプライヤーとの取引が広がった。今はAIや自動運転だ。付き合いのなかった会社から信頼できる相手を探さなくてはいけない。今は変化のスピードが速い。オープンイノベーションと社内外で訴えているのはそのためだ」
―取引先が変わる中で取引歴の長い系列サプライヤーとの関係はどう考えますか。
「購買担当の時に、系列のホンダに対する依存度が高くいろいろ手を打った。その際に非系列とも取引を広げた。今後も系列だけを特別扱いすることは考えていない。だが戦略の共有を深めて互いに強くなれる関係を築きたい」
【記者の目/攻守一体の協業を】
自前色の強いホンダのイメージは過去のものになりつつあり、他社との協業は今に始まったことではない。ただ協業の中身を見ると、車の基本性能に直接関与しなかったものから、最近は自動運転やモーターなど車の根幹に近づいているようだ。攻めの協業拡大もいいが、同時にホンダならではの根幹を守らないと固有の強みが揺らぎかねない。(池田勝敏)
nikkan.co.jp(2017-02-27)
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