走りの上質さ ホンダ・フリード

 ホンダのコンパクトミニバンのフリードが、フルモデルチェンジをして2世代目となった。新型も5ナンバー枠を守り、国内で扱いやすい寸法のクルマとなっている。

 新型は、室内に3列シートを持つフリードと、3列目をなくして荷室の自由度を高めたフリード+(プラス)の2種類に分けられる。フリード+は、従来、スパイクと呼ばれていた車種の後継となる。

 フリードとフリード+それぞれに、1500ccエンジンを使うハイブリッド車と、1500ccエンジン車との区別がある。ハイブリッド車には7速DCT(ツインクラッチ式の変速機)が、エンジン車にはCVT(ベルト式無段変速機)が組み合わされる。さらに、それぞれに、前輪駆動車(FF)と四輪駆動車(4WD)が設定されており、用途によって選ぶことができる。

 今回試乗をしたのは、フリードのエンジン車と、フリード+のハイブリッド車だった。どちらもFF車である。

 どちらのクルマも共通していたのは、走りの上質さだった。前型は、ちょうどいい大きさの5ナンバーミニバンという魅力はあったが、室内騒音が大きく、乗り心地は雑で、快適なクルマではなかった。しかし新型は、走り出した瞬間から静粛性に富み、乗り心地に落ち着きがあって快適なのである。いいクルマだと、素直に思える。

 そのうえで、エンジン車の活気ある走行感覚がとくに印象深かった。同じ排気量のエンジン同士で、ハイブリッド車はモーターによる補助があるため、モーター補助のないエンジン車で加速など満足できるのかと思っていた。だが、市街地から都市高速まで、全く問題なく元気な走りをもたらした。


 ホンダ車の低燃費モードであるECONスイッチを入れて運転しても、加速に不満はない。日常的に、ECONスイッチを入れたまま使える。ただ、外すと、いっそう活気ある走行感覚を楽しめる。

 少し気になったのは、走行中常に上下振動が収まりにくいことだ。タイヤ空気圧の調整で収まるのかどうか?…ここをなんとかしたい。

 ハイブリッド車に乗ると、車両重量が増えることもあって、より重厚感のある乗り心地になる。低速では、モーターのみでの走行もでき、発進からの動き出しの手応えはよい。ただし間もなくエンジンが始動するので、ハイブリッド車らしさはあまり感じにくいかもしれない。


 高速道路などで強い加速を試みると、7速DCTのトランスミッションが小気味よい変速をして、スポーティーなエンジン車を運転している感覚になった。

 ハイブリッド車も、ECONスイッチを入れたままで十分な加速が得られる。そして、エンジン車と同じように外すと、活気ある加速を楽しめた。

 ハイブリッド車も気になる点があり、それは、ハンドル操作に対する動きが敏感で、走りがふらついてしまうことだ。操舵そうだに遊びが少なく、ちょっとした手の動きにすぐ進路が変わってしまい、それでふらつくのである。長距離移動では、緊張感が抜けず疲れるかもしれない。


 全体的には、前型を超える大きな進化を実感させる新型フリード/フリード+であった。選択肢の減っている5ナンバー車の中で、走行性能も実用性も、満足度の高い一台と言えるのではないだろうか。

< 御堀直嗣 (みほり・なおつぐ) >

yomiuri.co.jp(2016-11-22)