ホンダ、鋼とAlを結合する技術を開発し、 世界で初めて量産車のドアパネルに適用
ホンダは、鋼とAl(アルミニウム合金)を結合する技術を開発した(図1)、従来鋼製だったドアのアウタパネル部分にAlを採用した(図2)。
ドアを軽くするためにAl製にするメーカーはいくつかある。軽くはなるが、コストも上がる。ホンダの試算では、鋼製より1台当たり22.5kg軽くなる代わりにコストは290%、つまり3倍近くなる。アウタだけをAl製にすると、11kg軽くなり、コストは110%にしかならない。つまり軽量化の幅が半分になる代わり、コストの上昇幅は1/19で済む。
鋼とAlを貼りあわせてドアを造ることは有利であると分かっており、各社が開発を進めてきたが、誰も成功しなかった。第一の原因はドアの反りだった。塗装するとき、温度は200℃まで上がる。従来の考え方で鋼とAlを貼りあわせてドアを造ろうとすると、10mmのオーダーで反ってしまう。これではドアの建てつけが成立しない。
Alの熱膨張率は鋼の約2倍ある。塗装中、温度を上げるとAl製のアウタが大きく伸びる。通常のドアはヘム折りを1回だけしているため、アウタが伸びる力に対抗できないためだ。Al板と鋼板を重ねてプレスに送る前に接着剤をロボットで塗っておく。通常のヘム折りをすると、板と板の間に接着剤が挟まることになる。アウタが伸びる力に対抗できないため、接着剤の膜はせん断されて変形する。塗装ブースを出て冷えると、接着剤は硬化するため元に戻ることができず、ドア全体として反ってしまう。
このためホンダはヘム折りを2回にし、アウタが伸びる方向の力に対しても素材同士が押し合って抵抗するようにした。実際には2工程のヘム折りをするのでなく、プレスするときの金型内にドアの面内方向に動く分割型を置き、端面から押す。この金型は横から見て中央が円弧状に凹んでいるため、鋼とAlを重ねた板は押されて上にめくれる。そのまま押し続けると円弧に沿って巻かれていく。ストロークを長くすると、1回巻かれるだけでなく、ぜんまいのように何回も巻くことができる。続いて上型で押すと、丸断面のものが平らにつぶれる。熱変形の大きい場所4カ所をこの構造として、加熱時の変形を防いだ。
その4カ所以外はヘム折りを1回だけとした。接着剤のゴム成分を増やしたため、硬化しても、ある程度は変形できる。これで反りを抑えることができる。
鋼とAlという異種材料を貼り合わせるときに問題になるのが電食だ。新日鉄住金製の「Super Dyma」を採用した。これはAlが11%、Mgが3%、Siが0.2%、Znが85.8%という構成の膜を270MPa級の高張力鋼に被覆したものだ。膜の腐食電位は−1.0Vで、Alより卑である。なお、Alは6000系合金。
これにより、従来の鋼製ドアパネルに対して4枚で63.5kgが52.5kgと、約17%軽くなった。燃費や動力性能の向上に寄与するとともに、車体の外側が軽くなり重心が車体中心に集中することによって操縦安定性が向上する。ホンダはこの技術を米国で2013年3月に発売する北米仕様のアキュラ新型「RLX」に採用し、順次拡大を目指す(図3)。
《追記》
☆本田技研工業情報
「スチールとアルミを結合する技術を新開発し、世界で初めて量産車のドアパネルに適用 〜軽量化により、燃費や動力性能の向上に寄与〜」(ここをクリック)
nikkeibp.co.jp(2013-02-18)
|