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 第三章 生産現場におけるスタッフ
 
 生産現場のスタッフといえば、通常技術担当と保全マンである。
 そして、直接生産に従事しているラインマンと共同で現場の保有する資源を活用し切って、最高の能力を引き出し続けるのが役割である。
 そこで、この3者の仕事の分担を考えてみると、生産システムという子供を取り囲む、両親と祖父母の関係に例えることが出来る。
 (ここで言う生産システムの中には人が入っている場合と入っていない場合があるが、本論では人が入っていない立場を採る。何故ならば、ここで言う生産システムに人を入れるということは、人を機械システムと同様に考えることを意味するからである。)

 ラインマンは母親のようなもので常にそばにいて面倒を見る。
 異常が無いか、元気か、といつも気にかけ、活動状態に一喜一憂するといったところ。

 技担は父親的で、外部からの影響に対して子供を守ることと、外部からの良い事についても取り入れることを考える。

 保全マンは、両親が困ったときに手を貸す役で、部分的には母親的にも父親的にもならなければならず、知識、経験が物を言う。こんな事から祖父母という事が出来る。

 従って、生産システムは、この周囲の大人によって育てられ成長していくと例える事が出来る。
 そして、周囲の大人は家族であり、主たる役割はあるというものの、何でもお互いに補完するような間柄でなければならない。
 しかも、母系家族である事が望ましい。
 但し、現実問題としてはそれぞれの人が常に移動してしまったり、技担や保全マンはいくつものシステムを担当する事になったりで、この家族的環を実感し難いという事がある。

 ホンダの三現主義の精神から言えば、この環(サークル)こそが三現の源である事は誰でも理解できる。
 然るに、通常よく使う「現場」という中には、技担や保全マンが抜けており、いわゆる「現場の人」というラインマンだけが入っている「いびつ」な形がまかり通っている。
 システムが大規模化するに従って、こういった第一線のスタッフ無しではシステムが機能を発揮できなくなる。ますますこの環(サークル)が大事なものになってくる。

 工場単位に広げて考えると、それぞれに係長や課長(or 課長クラス)の人がいて、それぞれラインマン、技担、保全マンに繋がっているわけだが、これについても図−3・2のように前述の最小の環を広げたように理解すべきである。

技担の係長や課長クラスは、課の母親である課長に一目置きつつ相互に補完し合うという関係である。

 ここで、やはりスタッフという言葉を使う事も適当ではないという気がして来る。
 スタッフという言葉を使えば、その相手としてラインという言葉が出て来て、その間に壁を感じる。
 全て現場の人なのである。


 ここでP.ドラッカーのスタッフ論の一部を紹介する。
 この中のスタッフというのは軍の参謀のようなものを指し、工場の第一線にいる人とは全く違うイメージである事を念頭において読んでもらいたい。

 − P.ドラッカーのスタッフ論 −
・「スタッフ」「ライン」は軍の用語であり、企業には適さない。
・どうしてもスタッフという言葉を使い、又それらしく機能させようと
 するならば、トップマネジメントの助手と位置づける。
 この役割の人が経営管理者を支配してはならないし、経営管理者の
 行動プログラムを作ってもいけない。
・企業活動は、事業のマネジメントとその事業に何かを供給する
 マネジメントの2つしか無い。
 (工場で言えば、生産マネジメントと主に技術マネジメントと言える)
・計画する者と実行する者、前者がスタッフ、後者がライン的な考え方
 が間違いの元。
・いわゆるスタッフとは、責任抜きで権限のみ有する者で、これは
 破壊的な害をもたらす。
・スタッフ部門は現業の経営管理者に貢献すべき存在。


 結論的に言うならば
 企業にはいわゆるスタッフは不要。
 事業活動に貢献する機能としての専門家、又は専門家集団が必要で、それは経営管理者を手助けするものでなければならない。


 P.ドラッカーの言うように、企業活動で重要なのは、事業のマネジメントとその事業に何かを供給するマネジメントであると思う。
 工場に当てはめてみると、生産のマネジメントと技術行動のマネジメントという事が出来る。
 但し後者については、その企業の考え方や文化によって何を置くか違いが出るところであり、ホンダのように、「生産現場を技術により常に成長させて、それを活力とするのである」と考えている会社では上記のようになるであろう。


 そこで技術行動のマネジメントであるが、正しく今、製造技術部会に課せられている課題である。
 製造技術部会をスタートさせた時の目的に沿って運営マネジメントされるならば大いに期待が持てるが、現実は、工場で行うべき研究(根深問題の究明等)もなかなかうまく進まないのも、技術マネジメントがうまく行っていない事を物語っている。

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