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 第二章 生産システム側はどうあるべきか

 1.人の成長、システムの成長
 
 今までのところでは、生産システムが歴史的にみて、あるいは業種を問わず大局的にみて、個別の生産から大量生産を経てプロセス生産に移行する(P.ドラッカー)という考え方は、当を得ていると言うことができる。
 しかし我々は、同じ業種内また同じ企業内での生産システムが、どうあるべきかを考えなければならないし、尚且つ、一旦ラインに投入された生産システムをどうするかと言うことも考えなければならない。

 前章では、'人と生産システムが互いに影響し合ってレベルを上げていくことが有りたい姿である'とした。これは、人に対しても生産システムに対しても、成長を期待していることになる。そして、ここで言う成長していく人は'新しい職業人''新しいプロフェッショナル'として位置づけ、従来の単なるオペレーターとか作業者という概念を払拭しなければならない、とした。
 さて、人と生産システムが影響し合って成長するということを、もう少し掘り下げてみよう。
 生産システムは、作られた時それまでのノウハウ(知恵)がふんだんに盛り込まれているわけで、それを扱う人は、盛り込まれたノウハウが100%生きるように、その関連の知識を得ておかねばならない。
 これは、システム側から人への働きかけということができる。
 次に、人からシステム側への働きかけは何か、を考えてみると、@使い易い、間違いにくいと言う低次元のものから始まって、A自分の意志が伝わる、そして、B日常生産の中で得られたノウハウを追加盛り込みする。と言う具合に進んで行くであろうことがわかる。
 この中で特に、Bともなれば正にステップアップであって、その為のシステムの改造や追加手当てがなされることになり、この事は、人からシステムへの大事な働きかけと言うことができる。


 一般に、生産システム(生産設備)は、新しい時が最高の状態で、使い込むうちに次第に劣化すると言う考えがある。
 これは人が、良い意味での影響を与えない、とした場合は正しい。そしてこれは、人の能力を無視した考え方に通じる。

 本論では、生産システムは成長する、あるいは成長しなければならないと言う立場を採る。
 即ち、生産システムは'ノウハウを吸収して成長する'のである。
 熟練した職人は、素晴らしい道具をもっている。
 それも自らの知恵を反映させた道具を。生産システムも人が使う道具である。
 只、規模が違うこと、ノウハウを反映させると言っても自分一人だけで直ぐにできると言うものではないこと、人も個人と言うより複数の人になったりチームになったりすること、等が異なっているだけである。
 いわゆる職人と、ここで言う新しい職業人とは必ずしも同じではないが"物作りにおける人"と言う見方でいうと、かっての職人の発展形が新しい職業人であるといってよい。
 職人が自分の道具を大切にし、ノウハウを反映させて他の人より良い仕事をしようとする行動と、新しい職業人が生産システムに働きかけてノウハウを盛り込もうとすることは、基本的に同じである。

 近年の生産システムは、非常に規模が大きく、複雑化、ハイテク化している。
 人間がより豊かな生活をしたいと望む限り、物作りにおけるこうした傾向は逆行することはない。
 このような中で'ノウハウを吸収して成長する'とはどういう事なのか、考えてみよう。


 イメージとしては、図−2・1・3 という事になろうが、具体的にはどんな様なことか溶接ラインシステムを例にして考えてみる。
 溶接ラインを運転している人は、溶接強度品質を担っていて、そのノウハウは溶接チップのドレッシングと交換タイミングに集約される。重要なもう一つの精度品質については、セットすべきパネルが正常であることを確認し、そのパネルが正しくJIGにフイットしたかどうかを毎回チェックしている。
 その他、機種の違いを判断し正しく段取換えをし、生産量を確保し、システムの調子が少しでも悪くなれば早めに適切な行動を起こす、等など。
 これらは、一部自動化しシステムに取り込まれたものもあるが、おおむね人の役割と位置付けられているもである。
 もしこれらが、適切なセンシング機能等によって上手に自動化されるならば'人のノウハウがシステムに吸収された'と言う事ができよう。
 この時人はひとまわり大きな仕事ができることになる。
 人も成長する。
 一旦ラインに投入された稼働中の生産システムも、こうして成長させて行くことができ、又メンテナンスについても単に元へ戻すだけでなく、成長を伴うメンテナンスにして行きたいものである。

 新しく投入される生産システムは、それまでのノウハウを充分吸収したものであるはずであるが、当然荒削りなものであって、ポテンシャルはあっても当初は能力を充分に発揮できないというのが普通である。
 そこで、生産をしながら、レベルの高い人による"生産システムの磨き"とも言うべき活動が必要になってくる。
 FOG(Future Operation Growth)活動はまさしくこの事であり、システムを成長させる初期段階の活動といえる。

 ホンダには'手作りの自動化'と言う言葉がある。
 このFOG活動の延長上にあるシステムの成長、即ち生産をしながらそこから得られるノウハウを反映させることが、まさしく手作りの自動化の基本である。

 ここで、30年前のP.F.ドラッカーの著書「現代の経営」の中の一文を添える。
 「企業経営に必要な資源の内、成長し得るのは人だけである。
 人は他の資源と異なるのである。」
 「人は成長し、発展する。何に対して貢献すべきかを、自ら決定できるようになる。」
 「しかるに我々は、通常、一般従業員を経営管理者と区別して、自分や他の人間の仕事についての決定に責任もなければ関与もせず、指示されたとおりに働く人たち、として定義する。
 ということは従業員を物的資源と同じように見、企業への寄与に関しても、機械的な法則のもとにあるものと考えていることを意味する。
 これは重大な誤りである。
 しかしこの誤りは、従業員の仕事の定義にあるのではない。従業員の行うことの多くがマネジメント的要素を含み、きわめて生産的な仕事にすることができると言う事実を見逃していることにある。」



 2.売れないものは作らない生産ラインとして
 企業経営的に見れば、売れないものを作ることが最大の損失であり、最も生産効率が悪いことになる。
 したがって'売れないものは作らない'と言う事は、生産ライン生産システムの基本要件であって、この中には生産ライン生産システム(以下生産システムに一括)に求められる全ての事が含まれる。

 まずフレキシビリティである。
 ある機種が売れてある機種が売れないと言うのは日常茶飯事である。
 この対応策として、複数の車種を一つのラインに流せるようにしておくが、新たな車種をも容易に受け入れられなければならない。
 そうすると、いわゆる汎用化(正確に言うならば、非車種専用化)が進められねばならない、と言う事になる。
 又、売れない旧型を素早く打ち切って新モデルをタイミング良く出し、立ち上がりは一気に‐‐‐ と言うのも常に求められていることである。

 次に生産リードタイムである。
 生産システムの中の仕掛かり、工程間流動在庫はすべて、売れないものである。これを可能な限り少なくすると言うのは生産システムのありたい方向である。

 そして品質である。
 不良品はまさしく売れないものである。すべての生産システムは、品質を中心に据えて構築されなければならない。

 それでは'人と生産システム'を考えた時'売れないものは作らない生産システム'にはどのようにつながって行くのかを考察してみる。
 前項で、人と生産システムは互いに影響しあって成長することがこれからの生産工場では必須であるとしたが、影響しあう場面はというと、品質向上の対応、稼働率の向上又はスピードアップの対応、新機種の立ち上がりの対応、などである。
 即ち、周囲の条件に変化が生じた場合生産システムは何らかの変化をしなければならないが、この変化させていく方向は、まさしく売れないものは作らない方向にベクトルが向いていて、その方向に変化していくことが「成長」という言葉で表現しているものである。
 したがって、もし逆のベクトルへ変化させて行くとしたならば、これは成長ではなくて"衰退"と言う事になる。
 要は、周囲状況に対応して変化させるに際して、ただ闇雲に対応すれば良いというものではなくて、この基本要件を根底に据えて方法論に入らなければいけないということである。
 例えば、あるラインが能力一杯の生産をしているとして、20%の増量の対応を求められたとする。
 この対応策としてはいく通りもの方法がある。
1、残業、休日出勤――――――経費増、組合問題
2、工程分散又は増、要員増―――労務費、スペース
3、工程増最小、設備対応――――設備投資(設備費)
 短期的なものならば 1、の方法も良い。長期的には 2、か 3、となるが、ここで基本要件にミートさせるならば、2、ではなくて 3、とし、アイデアを絞り出さねばならないことは明白である。
 この絞り出されたアイデアで対応された生産システムこそ成長したと言えるのである。
 尚、このような場合、アイデアを絞り出させ実行の可否を決定する立場の者は、常に経営的判断定規を持って判断すると同時に折に触れその定規を披瀝することが大事なことである。
 例えば、この20%の増量でこれだけの利益増を図りたいが、販売経費その他でこれくらい使うから設備投資ここまでしか出来ない、要員は増やすな、この投資で体質が今より少しでも良くなれば丸儲けである等。



 3.人―M/Cシステムの設計
 IMS(通産省が主催する国際的研究プロジェクト Intelijent Manufactuering System)では、人間を中心に据えた生産システムが将来の生産システムだとして、「人間−機械最適共存システム」をどうやって作って行くかという研究をしている。
 それによれば、「人間−機械共存システム」で最重要なファクターは、ヒューマンインターフェイスであると述べたいる。
 そしてそれを具体化するためには、現実の世界をモデリングし、蓄積し、操作するのに、広い意味でのマルチメディアデータベースの存在が不可欠であるとしている。
 しかし現状では、いずれの技術を使うにしても不満であり発展途上であると言える。
 近い将来使い良くて役に立つVR(バーチャルリアリティ)技術が手近なものになると思われるが、それまでは、三次元CADやエンジニアリングシミュレーターソフトパッケージ等を活用して、ヒューマンインターフェイスとしてのシミュレーションを行っていかなければならないだろう。IMSでは、更にこの三次元グラフィックスシミュレーションを、より有効な生産システム支援ツールにする様提案している。  IMSの研究は、一方人の面でも興味深い捉え方をしている。「作業者の心理を整理する」と題して、教育、訓練のあり方、働き甲斐、生き甲斐にまで言及している。(別紙)  この中からも生産システムのあり方を一部窺い知ることができる。  もう一つ別な角度から生産システム(特に機械設備)を見てみることが必要とかんがえる。それは工業デザイン的観点である。  生産設備は(特に自動機と言うものは)人が関わるという事について、あまり真剣に考えられていない。そしてシステムが大きく複雑になるに従って人の位置づけは希薄になり、人の役割と位置づけを明確にして人の接する部分とそうでない部分とを区別してそれぞれに最適化を計ろうとする工業デザイン的見方からずれたものになっていく。  これからの人−マシンシステムの設計においては、人の位置付けを明確にするという意味において、この工業デザイン的見方は不可欠であろう。



 4.人とマシンシステムのコミニュケーション
 前項で述べたIMSの研究(別紙)の中で「作業者(オペレーター)と機械の相性が悪いという様な場合、これは作業者が対象を理解しようとする過程での感情の反作用が現れた例で、これがエスカレートすると脅迫観念にとりつかれるケースがある。
 この時は相手の機械はあたかも初対面のように計り知れない性質や能力を持っているように思われ、適切な判断がでなくなる」といっている。
 これはまさしく、お互いを知らないというコミニュケーション不足から来ているもので、子供の"人見知りする"というのと同じ現象である。この様な場合、人(作業者)+マシンシステムの能力が充分発揮されることはなく、むしろそのシステムを持つ工場のブレーキになる。

 この問題の解決方法はコミニュケーションを良くすることに尽きるわけであるが、しからばどの様にしたらGood Cominucation となるのか。
 より具体的な手掛かりを掴みたいという意図をもって現場の"人"の意見を聞くことにした。
 結果は、コミニュケーションについてだけでなく、本論全体に関わるディスカッションになってしまったが、ここでいうコミニュケーションにつながるいくつかの要点が出てきたと思われる。

 '98年3月、狭山製作所の溶接に勤務する班長代行クラス(日常機械の操作から生産と人の管理まで何でもやる第一線)5名とディスカッションする機会を得た。
 彼らは、入社7年から15年で一様に大きなシステムを相手にして仕事をしてきたし今もしている。
 この中で、人とシステムが共に成長するという考え方は、非常に良く理解できるとした上でシステム側への注文がいくつかでた。

1.憶える事が多すぎる、もっとシンプルにして欲しい。
  これは例えば、操作盤についてが特に良い例で、各装置毎にかなり面倒な
  操作盤がついている。通常使う時は全体が関連して動くわけで、毎日
  その度に操作盤をいじる必要はないのではないか。普段は集中操作盤だけ
  で良い。操作ミスも減る。
2.人とマシンのコミニュケーションという点では、モニターの導入で
  少しずつ良くなっているが、本当に必要と思われるものを数少なく確実に
  モニターして欲しい。
  (何が必要で、何が不要かは、毎日使っている人が良く分かっているが、
  このノウハウを上手く取り込んで次に設備やシステムに反映するのが
  意外と難しい、という話がでた。これは組織をまたがるコミニュケーション
  の問題である。)
3.新しい生産システム(マシンシステム)をラインに入れた時に、新しい技術
  ではなくベーシックな点でトラブルを起こすと、全体に対して信頼感を
  失い、関わり合いに対して非積極的になる。
4."人の方がもっと勉強すべきだ"
 (これについては、そのように意欲のある人には資料が入手し易くする等の
  環境作りが必要)
5.異常の時に、マシンの状態がどうなっているのかが、うんと簡単にわかる
  というのが望ましい。(マシン側から不調のサインを出す)

 以上のような意見その他のディスカッションから得た結論は、「生産システムの成長ということを常日頃意識し関係する人(第一線のオペレーター、技術担当、その領域のEGの技術者)が、その成長に実際に係わることで次のシステムには何をすべきかが具体的に理解できるのである。」ということであり、こういったサイクルが上手く回るようにする為には、組織だとかコーディネイトする人が必要なのではなくて、日常の小さなサイクルを沢山廻すことから、大きなサイクル自然に上手く回っていくはずである。
 EGは、生産現場の人たちと共に、生産システムの競争力を維持向上させる役割を担っているが、小さな改善にはあまり関心がなく、係わろうとしない傾向にある。
 しかし、現場で何が起こり何が求められているのかを知らなくては、役割を果たすことはできない。
 次世代の生産システムという大きなテーマも、小さな改善の土壌の上に育つものであって、唐突に出てくるものではない。
 したがって、これからもEGはもっとこの領域に力を注ぐ必要がある。(かつては、かなり力を入れていたが国内シュリンクの時から様子が変わってきた) 即ち、小さなサイクルを廻すことにもっと神経もエネルギーもつかうべきである。
 そして実行のタイミングは新機種などの機会を有効に使うのは言うまでもない。


 '98年4月 鈴鹿製作所エンジン工場の、シリンダーヘッド、シリンダーブロック、クランクシャフトの加工を担当している第一線の人たち(技術担当も含む)と話し合った。その要点を下記にまとめる。

1、新しいシステムについていける人、ついていけない人の差がおおきくなって
  いる。
2、やりがい、働き甲斐という点で、物を作る実感がなくなる傾向になって来て
  いるのは問題である。(ブラックBOX化)
3、自動化が進められてきたが、本当に自働化になっているだろうか?
4、設備が高度になり、人も変わらねばならないが、工場では対応できない。
  勉強するチャンスがない。
5、成果を上げたことで喜びを感じる、というのは、実は大きい。
6、「俺のマシン」という考え方が重要。
7、「如何に楽をするか」という発想から工夫がうまれ、システムを成長
  させることにつながる。
8、無関心の人が多くなっていると感じる。意識を高める人施策が必要。

 全体的には、教育、訓練を含む人施策が重要であるという意見が多かったが、ブラックBOX化への心配についても人施策として捉えて進めるべきであろう。
 それらの結果、「俺のマシン」意識や、自動化が自働化になるような改善(成長)がなされていくはずである。
 従って人施策は、人のマネジメントの専門である労務総務にだけ任せておくのではなく、システムを使いこなす現場、システムを供給するEGなどが「共創」していかなければならない。
 同じく4月24日に埼玉製作所和光工場の、機械加工関係の第一線の人達と話し合う事が出来た。(班長及び代行) 又保全の第一線の担当も参加したが、彼の意見は生の声として別紙で添付する。

1、1ラインに流す機種数も増えて、システムがだんだん複雑になって
  きている。そんな中で人がついていけるのか心配。
  イレギュラーの対応についても、何らかの訓練が必要。
2、高齢の人をラインで使っていかざるを得なくなっている。この人達
  を生かさなければならない。若い人はNCマシン等すぐに憶えるが
  その機械の原理や加工のメカニズムを心得ている高齢の人のほうが
  価値がある。 と考えるべき。
3、自動化が進んでいるラインでは、人は刃具交換ぐらいしか係わらな
  い。他には切粉問題で係わる程度である。―――(この様な意見が
  出たが、人の係わり方について肉体的作業だけを考えたという誤解
  があった。)
4、まずは、チョコ停をうんと少なくしなければ何をいってもはじまら
  ない。人が少なくチョコ停対処に追われてる。
5、ヘッドの一部とNSXをやってるNC中心の職場、着脱は人、――
  活気のある職場になっている。
6、放っておけば、人の成長には大きな差がつく。やはり会社の施策と
  して訓練や教育をしなければ、狙っている様な強いラインにはなれ
  ない。 今はその場がない。

   
 同じく6月24日に「人と生産システムのGood Cominucationのあり方」を求めて、鈴鹿製作所の溶接(NO3ライン)の第一線の人たちと話しあった。
 コミニュケーションということには直接結びつかない様な意見も含まれているが、要約してみると、

1、作業の中には、まだまだ肉体的に苦痛なものが残っていて、(重量
  物作業etc)まずそれをなくすのが優先である。
2、次々と新しい設備が入り、知識、操作等 ついていけない。
3、人には能力差(機械に強い、弱いという違いかもしれない)が有り、
  一律にどうすれば良いのかを提示することはできないが、一例とし
  て、表示(マシンの状態を示すもの)などは、一個所だけでなく人
  の動きに応じて要所要所に同じ表示をしてほしい。
4、年配の人(概ね40代の人)を、新しい設備にどう馴染ませるか
  苦しんでいる。
5、第一線の人とは誰を指すのか?大きなシステムでは、その中にセッ
  ト作業をしている人、オペレーターという人、そのシステムの現場
  の責任者もいる。
  (これに対しては、「第一線は個人の場合もあるが、チームという
   場合もあり、このケースでは、職場の責任者をリーダーとする、
   数人のチームと考えた方が良い」という話し合いをした。)
6、今の機械は少し勉強すれば、非常に使い易くなっている。どの状態
  で止まっているとか、次に何をしなければならないかとか、個人
  個人の態度が重要。
  (技術スタッフの意見)


 4回のディスカッションを通して共通な課題として明らかになった事は、

1、人の教育訓練を現場の第一線や個人の意欲だけに期待していたのでは
  NGである。相応の施策が不可欠。
2、「誰でも使える」という事と「使い易い」という事は必ずしも同じ
  ではない。真に使い易い生産システムとはどういうものかを明確に
  しなければならない。
  (本論では、誰でも使える生産システムを指向していない。しかし、
   使い易いシステムは必要条件と考えている)
3、まずは、チョコ停やベーシックなトラブルを少なくし、その上で
  人とM/Cのコミュニケーションの手段に手をつけるべし。
4、人とM/Cのコミュニケーションを良くする土壌は、M/Cを
  使う現場と、M/Cの供給側の不断の人の交流である。それも、
  できれば小さくても良いから、回数の多い仕事を通して。
5、高齢の人、経験の多い人をどう生かすか。
6、「俺の機械」意識をどう高めていくか。

 以上であるが、最後のディスカッションで出てきた話の中で、2つの新たな課題があると感じられた。
 その一つは、「第一線の人」は職場によって、それぞれ異なる定義をしなければならないかもしれない事。
 それにはチームという考え方を取り入れるのが良さそうであるのはわかってきた。
 2つめは、前述のチームに技術スタッフ、保全メンバーを入れるのか入れないのか、入れるとすればリーダーは誰なのか。
 これは又、現場におけるラインとスタッフという古くて新しい問題にも行き当たる。
 そんなことから、これについては第3章で述べる事にしたい。

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