中国の自動車産業、最近の情勢と課題
自動車がこの世に生まれて、1世紀以上が経過し、その間でT型フォードにて大量生産へと入り、性能・機能も大きな変革をしてきている。いまや、年間4000万台の生産を超え、5000万台の生産になろうとしている。一方では、地球の温暖化が進み二酸化炭素の排出量を規制して、温暖化に歯止めをかけようと言う動きが為されている。中国を始め東南アジアの自動車の増加は著しく、アフリカにもそのうち自動車が走るようになるであろう。燃料電池車の開発も取り組まれているが、実用化、コマーシャルベースに乗るには今しばらく時間が掛かると思われる。省エネと言うことではヨーロッパはディーゼル指向であったが、ヨーロッパもハイブリッドの導入を考えているようだ。どうやら本流はハイブリッドとなりそうで、今しばらくは、ハイブリッド車が増加するだろう。しかし、石油燃料を主にすることは間違いないと思われる。ハイブリッド車では日本が先行しており、トヨタ・本田がそれぞれ独自展開をしているが、ややトヨタが先行している。欧米のメーカーは後れを取っており、トヨタと提携をしていくところも多い。燃料電池車の開発をめぐっても、熾烈な競争が展開されている。
中国では、ここ5年間での自動車生産は著しく増大し、その中でも乗用車が大きく増大している。生産の伸びは1990年代後半に出された政府予測を大幅に超える勢いである。ただ、2003年のSARS騒ぎを潮に、過熱気味であった景気を抑制しようと言う政府の動きとも相俟って、成長が少し鈍化した。2004年には生産過剰となるところも現れて、優勝劣敗の競争に入ったとも言える。今までは、旧モデルを生産する(一時代前の、お下がりモデル)ところもあったが、最新モデルへの置き換えや、新モデルの投入も相次いでいる。また、2008年には北京でオリンピックが、2010年には上海で万博が、同じく2010年に広州ではアジア大会が開かれることが決まっており、そこへ向けてのインフラ整備も進むとともに、経済のけん引役を担うと考えられる。従って、一部都市部の不動産投機(不動産バブル)が心配であるが、それに対しても規制がかけられようとしている。『強い元』に対して、他の諸国から(とりわけUSAから)通貨切り下げの要求があり、その方向に少しずつ動くと思われるが、大きな趨勢を変えるには至らず、相変わらず7%から9%前後のGDPの伸びは続くと考えられる。自動車産業も、2010年には、700万台から1000万台の規模に成長すると考えられる。(これは、川アの私見であり、中国政府、その他の機関から出されたものではない。) 北京・上海など一部の都市では、車の乗入れ規制(末尾ナンバーが奇数、偶数など)をしているところ、慢性的な渋滞を引き起こしているところ、広州(最近少し青空が見えるようになったが)や重慶のように年中空がどんよりと曇っているところ、駐車場を探すのに一苦労するところなどなど交通事情は必ずしも良くない。また、交通マナーも悪く(自動車も歩行者も)交通事故も多い。交通事故による死者も年間何万人にも及んでいる。信号の整備や、道路も欧米のシステムをまねているところも多く、合理的であるがそれを活用するほうの『人』が問題である。北京辺りは相当良くなったように聞いているが、広州などはマナーの向上が早急に為される事を望む。電力事情も、予想以上の経済発展に電力供給量・電源開発が追いつかず、停電が日常茶飯事となりかねない。産業の安定的な発展の妨げにもなるだろうし、外資の導入にも黄信号がともりかねない。電力で言えば、今はまだ石炭(エネルギー効率は20%台で、大気汚染も著しい)が中心であるが、大気汚染の問題からもエネルギー効率を上げること、と共に石油への置換(これも余り好ましくないが)、原子力発電所(絶対量は限られるだろう)の建設計画も前倒し、増量が必要であろう。石炭の供給に関しては、小規模の炭鉱で違法採掘となっているものも多く、閉鎖・廃業も増えており、供給がさらに厳しくなりつつある。更に言うなら、最も積極的に取り組まなければならないのが、再生可能エネルギーの活用による電源開発かも知れない。(風力・太陽光・水力・海流・地熱)これらは、すでに他の国で実用かされていたり、採算ベースになっているものもあるが、大きな開発費用、長時間を要するものもあり、10年、或いは20年の計を作って取り組まなければならないであろう。(これは中国のみならず、地球規模で考えなければならないことかもしれないが……)生活が豊かになると、公共・生産に必要な電力の伸びとは別に、民需の伸びも大きくなる。テレビはすでに普及しているが、冷暖房機(まずクーラー、ストーブから空調機へ)洗濯機、冷蔵庫 最近ではDVDプレーヤーの普及が進んできた。住宅環境も良くなってきた。地域によって、多少普及の仕方に差があるものの、大きくは異ならない。また、若者には、携帯電話、パソコン、デジカメの普及が急であるが、結婚前の若者は住宅をまず取得する。そして、結婚してから?自動車を保有したい、と言う若者が都市部に増えている。住宅が増え、電化製品が増え、電力の需要は予測以上に伸張すると思われる。 中・西部の農村(都市近郊の農村も?)との経済格差は大きくなるばかりで、政治問題となりかねない。政府主導の中・西部開発に民間もどこまで加わるか、がキーとなるのではないか、と思うが民力を参加させることは困難を極めるであろう。一つのアイデアとしては、中西部の砂漠化を防ぐためにも緑化展開はどうだろうか?工業力を活用した灌漑や樹木育成、果樹育成などが出来れば、砂漠化を防ぐだけではなく、果実収穫が現金収入に繋がり、農村人口の職場確保にも繋がらないだろうか?政府が民間人、学識経験者も交えて、知恵を出し合うことが出来ないだろうか?これは実現可能かどうか判らないが、不公平感をなくすような施策が一つでも二つでも為されることが大事ではないか、と考える。沿海州の発展、と言いながらそれを支えている労働力は、中・西部の農村の『出稼ぎ労働力』に負うところが大きい。ただ安いから、と言うだけでなく彼らの『知力』も大いに生かす工夫が必要だと思う。また、戸籍問題も無視できないだろう。『一人っ子』政策も都市部ではかなり厳格に守られており、『小皇帝』がはびこり始めている。が、農村部では働き手が必要なことと、運用も多少異なる(第1子が女であれば、第2子まで)事で、二人子供がいるところや、もぐりで生まれた子もたくさんいる。その子たちが、現在では成人し、働き手として都市部へ出稼ぎに来ているものも多い。ただ、戸籍の問題があり、結婚し・子供が出来ても教育に問題を残している。出稼ぎに来ている人達にも、大きく二つに分けられる。都市部へ出て働く、と言うことで都市に臨時戸籍(?)を持っている人達と、全くそれらを持たない所謂流動人口に分かれる。前者は雇い主が届けも行ない、社会保険などがきちんと支払われ、最低賃金も守られている。が、後者は社会保険も支払われず、最低賃金さえ守られていないこともある。病気になっても、業務で怪我をしても保障されない、と言うこともあるように聞いている。都市近郊では、開発が進められ農地を転用して工業団地(開発区)となるところも多い。開発区も多少乱立気味のところもあり、開発をしたが売れない、と言うところも出てきている。そのようなところでは、約束どおりに農民への補償がされていないケースもあり、政府に対して不信感が募って、暴動がおきているところもある。いずれにしても、農村部(農民)の経済発展が望まれる。 社会・交通インフラなどの課題
産業界・自動車業界が取り組むべき課題
政策・政府レベルで取り組んで欲しい課題
記:川ア 拓央(2006-02-14) |