「エンジン主体」から「モータ主体」に舵を切ったホンダ

 ホンダは報道関係者向けの技術説明会「HONDA MEETING」を12月5日に開催し、新開発エンジンや変速機、ハイブリッド技術、電気自動車の技術など、次世代のパワートレーン技術を一挙に公開しました。限られた時間の中で、とても取材し切れないほど盛りだくさんの発表だったのですが、そうした中にあって、私たちが注目していた技術の一つが、二つのモータを使ったハイブリッドシステムでした。

 トヨタ自動車のTHS(Toyota Hybrid System)と異なり、遊星歯車機構を使わない方式であることは以前から明らかになっていましたが、その具体的な中身については、これまでベールに包まれていました。

 今回明らかになってみると、ホンダの2モータ式ハイブリッドシステムの構造は、拍子抜けするほどシンプルなものでした。簡単にいえば、ほとんどの走行モードは、電気自動車(EV)、もしくはシリーズハイブリッド車(HEV)として、モータで走行します。そして、高速走行時だけ固定ギアでエンジンとタイヤを直結してエンジン走行するというものです。

 遊星歯車機構がない分、機械的損失が少なく、高効率というのがホンダの主張です。ただし、この方式の難点は、駆動力のほとんどをモータが担うので、高出力の発電機、モータが必要ということです。実際、今回展示されたプラグインハイブリッド車(PHEV)用のシステムは、モータの出力が100kW、発電機の出力が120kWという大きなものです。この点を開発担当者に問うと、確かにモータや発電機のコストが高くつくことは認識しており、現在その低コスト化に努力しているという返事でした。

 ホンダはこのシステムを、まずPHEVとして2012年に、次いでHEVとして2013年に実用化する計画です。これまでホンダは、小型のモータとバッテリを使うエンジン駆動が主体のシンプルなハイブリッドシステムを「IMA(Integrated Motor Assist)」として実用化してきました。

 これに対し、新開発の2モータ式ハイブリッドシステムはほとんどの走行モードでモータが駆動の主役となるシステムです。実際、このシステムを搭載したPHEVの試作車を試乗したのですが、走りはEVそのものでした。

 “君子豹変す”という言葉がありますが、エンジンに強くこだわってきたホンダが、ハイブリッドシステムでモータ駆動主体のシステムに舵を切ったことは、今回の発表会における大きなサプライズだったといえます。モータ駆動のクルマに、いかにホンダらしさを盛り込んでいくのか、エンジニアたちの「こだわり」に期待したいところです。<<鶴原 吉郎=日経Automotive Technology>>

nikkeibp.co.jp(2011-12-07)