「レベル7」世界で評価二分 尺度見直し論も


 日本政府が、福島第1原発事故について国際原子力事故評価尺度(INES)の評価で最悪のレベル7としたことについて、各国の専門機関の評価が二分している。とくに旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と同列視したことに国際原子力機関(IAEA)や、フランス、ロシアの専門家はそろって間違いとしている。これに対し、米国は日本政府の決定は妥当として、他の国の機関と判断を異にした。ただ、米国の原子力の専門家からは福島の事故をきっかけに、事故評価尺度そのものを見直す必要があるとの声があがっている。(SANKEI EXPRESS)

 国際原子力機関(IAEA)のデニス・フローリー事務次長は12日、ウィーンの本部で記者会見し、「福島の事故とチェルノブイリは全く違う」との認識を示した。ロイター通信によると、同次長はチェルノブイリ原発では原子炉が稼働中だったために巨大な爆発が起こり、大量の放射性物質を高層にまで巻き上げ、世界中にばらまいたが、福島第1原発は、地震のため原子炉が自動停止し、その結果、放出された放射性物質の量もチェルノブイリ原発よりはるかに少なかったことなどを挙げた。

 また、フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)のパトリック・グルメロン放射線防護局長も12日の記者会見で、福島第1原発事故は、チェルノブイリ原発事故には「匹敵しない」との見解を明らかにした。AFP通信によると、同局長は「現時点で福島事故は極めて重大だが、チェルノブイリ級ではなく、将来そうなることもない」と指摘した。さらに放射性物質の拡散も福島原発周辺の限られた地域にとどまり、欧州への影響もチェルノブイリ事故と比べれば無いと同じだ」としている。

さらにロシア国営原子力企業ロスアトムのセルゲイ・ノビコフ広報局長は12日、「原子炉の損傷の程度はレベル5を超えていない」として、福島をレベル7としたのは行き過ぎとの認識を示した。

 ニュース専門サイトの「ユーロニュース」のインタビューで同局長は、日本政府の対応について、「最初は事態を過小評価していたのに今度は明らかな誇張で極端すぎる」と批判し、事故の尺度については「レベル6」が適当との認識を示した。

 同局長はまた、今回の決定は、日本政府がこれ以上の批判を避けようという政治的思惑があるのでは、との見方も示した。タス通信が伝えた。

 これに対し、米原子力規制委員会(NRC)のグレゴリー・ヤツコ委員長(40)は12日、「事故が深刻であることは明らかで、決定には驚かない」と述べ、レベル7とした日本政府の決定は適切との認識を示した。さらに、これに先立って出席した上院公聴会で証言し、「まだ安定した状態ではない。原子炉の冷却能力が失われれば、さらに大規模な放射性物質の拡散もありうる」と警告した。

 一方で、米の専門家からは福島原発事故をレベル7に分類したことで、被害の度合いがまったく異なるチェルノブイリ事故との違いを説明できず、混乱を来たしたとの指摘があがる。南カリフォルニア大学のナジュメディン・メシュカティ教授は、ロイター通信に対し「福島をレベル7にするなら評価尺度を見直し、レベル8か9を加える必要がある」と語った。

 事故のレベルを決めるのは事故が起きた国や原発を運転する企業に任されていることが、事態をより複雑にしているようだ。(宮野弘之)

sankei.jp.msn.com(2011-04-07)