ホンダ、国内向け車種絞り込み 新興国向けの開発に注力

 ホンダは、国内で販売する自動車の車種を減らすことを決めた。国内市場が伸び悩んでいるためで、逆に需要が広がる新興国向けの車の開発に力を入れる。

 ホンダが現在国内で販売する自動車は26車種。売り上げが低迷していた「シビック」「クロスロード」「エアウェイブ」「パートナー」の4車種の販売を昨夏以降、中止した。近く「シビックハイブリッド」の販売もやめる。さらに、販売を中止する車種を詰めている。不振の高価格ミニバン「エリシオン」などで、次期型の開発計画を見直す方向だ。需要増を見込む軽自動車の車種は増やす可能性があるが、全体としては絞り込む。

 開発費を売れ筋に振り向けると同時に、広告や宣伝を少数の車種に絞り込むことなどでコスト効率を高める狙いだ。小型車「フィット」やミニバン「ステップワゴン」「オデッセイ」などの人気車の販売は続ける。

 ホンダの2010年の自動車の世界販売は355万5千台で、このうち国内販売は64万7千台、海外販売は国内の4倍以上の290万8千台にのぼる。前年からの伸びも、国内の2万台に対し、海外は14万台と大きい。中国では7万台以上増えて65万5千台と国内を追い抜くなど、海外販売の比重が高まっている。

 このため、中国を含むアジアや南米など、新興国向けの車種は増やすという。

 既存の車種を広く展開させることも考えており、近くアジアで発売する小型車「ブリオ」は、タイとインドで生産し、90万〜110万円程度で販売するが、ブラジルなど南米でも、外観を変えて販売することを検討している。

 フィットは2〜3年後に、現行車より設計を簡素化して、国ごとに装備や外観を変えやすいようにする。これまでは先進国向けの車をほぼそのまま新興国で売っていたが、新興国向けは装備を減らしたり外観を変えたりして価格を安くし、販売上積みを目指す。

 先進国でも、市場が再び拡大傾向にある北米向けでは、人気が高い小型トラックの車種を増やすことを検討する。

 自動車業界では、国内だけで売る車を中心に自社開発の車種を減らす動きが広がっている。日産自動車は高級車「プレジデント」「シーマ」を10年8月で廃止。ミニバン「ラフェスタ」も販売を縮小し、今年5月からはマツダから代わりの車種をOEM(相手先ブランドによる生産)で供給を受ける。富士重工業は軽自動車の自社開発を中止した。三菱自動車は早くから高級セダンの生産を中止しており、今後は日産から中型セダン「ティアナ」などのOEM供給を受ける。(西村宏治)

asahi.com(2011-02-11)