エコカー:「より安く」 ホンダ、フィットHV159万円
 利幅縮小でも需要喚起狙う

 ホンダは8日、小型車「フィット」のハイブリッド(HV)モデルを発売した。価格は159万円からで、HVとしては最安値。政府のエコカー購入補助金制度終了で新車販売の落ち込みが見込まれる中、割安感を出して需要喚起を狙う。競合メーカーもエコカーの品ぞろえを増やして対抗する計画で、顧客争奪戦が激しくなりそうだ。【米川直己】

 「今後10年、良いものを早く、安く、低炭素で提供する目標を掲げているが、フィットHVはその第1弾だ」。ホンダの伊東孝紳社長は東京都内で開いた発表会で意気込みを語った。

 フィットHVの燃費性能はガソリン1リットル当たり30キロと、HV専用車「インサイト」(最廉価モデルで189万円)と同じだが、価格は30万円安い。一方、一部改良して同日発売したガソリン車のフィット(燃費は1リットル当たり24・5キロ)の最安モデルは123万円。フィットHVの価格は両モデルの中間だ。

 もともと安い小型車のHVモデルで課題となったのは値段だ。値下げし過ぎると「ガソリンモデルの需要を奪いかねない」(幹部)が、高すぎればインサイトやトヨタ自動車の「プリウス」とも購入者層が重なり、「安価で実用性のある小型車」というフィットの強みを失いかねないジレンマを抱える。フィットはホンダの国内販売の約3割を占める看板車種だけに、小林浩・日本営業本部長は「ガソリン車のフィットはもちろん、(フィットよりやや大型でミニバンの)フリード、インサイトとのバランスや影響も考えた」と苦心をにじませた。

 価格を抑えたことで利幅の縮小も懸念されるが、伊東社長は「(採算は)ギリギリでやれる」と説明。フィットはインサイトと同じHVシステムを採用しており、最安モデルの投入で量産効果を発揮し、コストを削減したい考えだ。

 既に予約はHVで1万台、ガソリンモデルで約4000台と、1カ月の販売目標(1万4000台)に達し、小型車市場での存在感を一段と高める。

 ◇各社がテコ入れ

 ホンダが先陣を切って小型車市場にHVを投入して品ぞろえを広げたが、他メーカーも成長を見込めるエコカー市場の開拓に余念がない。

 主力HVプリウスが9月まで16カ月連続で国内販売首位を維持したトヨタは、フィットのライバル車でもある小型車「ヴィッツ」を年内に全面改良し、燃費を向上させる計画。小型車向けのハイブリッドシステムも開発中で、ヴィッツへの搭載も検討されている。プリウスでは、家庭電源で充電できるプラグインハイブリッドも12年に発売し、さらに品ぞろえを強化する。

 マツダと富士重工業もトヨタからハイブリッドシステムの供給を受け、富士重が12年、マツダが13年にHVモデルを販売する。

 三菱自動車は来年から、電気自動車(EV)の「アイ・ミーブ」の米国販売に着手、日産自動車もEV「リーフ」の国内販売を12月に始め、米欧にも投入する。

 9月の国内新車販売台数(軽自動車を含む)は、エコカー補助金打ち切りの影響で前年同月比1・2%減と13カ月ぶりに前年実績を下回っており、各社は顧客への現金還元などテコ入れに躍起。安価なフィットHVの登場で価格競争に拍車がかかりそうで、需要回復が遅れれば消耗戦に陥る恐れもある。

《追記》
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mainichi.jp(2010-10-09)