都市対抗野球:ホンダ九回に底力 JR四国は粘るも及ばず


 第81回都市対抗野球大会(毎日新聞社、日本野球連盟主催)は28日、1回戦3試合があり、第3試合は連覇を狙うホンダ(狭山市)が2年ぶり出場のJR四国(高松市)に辛くも打ち勝って、8−5で2回戦に進出した。

 ○ホンダ(狭山市)8−5JR四国(高松市)●

 ホンダが15安打で打ち勝った。同点の九回1死から小板、上田の連続長短打で一、三塁とし、西郷の左犠飛失で勝ち越し。なおも一、二塁から多幡が2点適時二塁打を放って試合を決定づけた。JR四国は、2度同点に追いつく粘りを見せたが、及ばなかった。

 ▽ホンダ・安藤強監督 武藤は先取点をもらい大事に投げすぎた。追い付かれても逆転されなかったので、終盤に何とかなると思っていた。

 ▽JR四国・森内健司監督 悔しい。勝たせてやれなかったのは僕の責任。先発の上田は変化球が抜け切らず、勝負球が甘かった。

 ◇「いぶし銀」西郷が犠飛

 あと2日で38歳になる大ベテラン、西郷の心は九回の絶好機でも、なぎのように静かだった。九回、外角球を逆らわずに左翼方向へ打ち返し、決勝犠飛(左翼手が落球)に。連覇を狙うホンダが、“いぶし銀”ともいえる4番の一打で、苦しい試合をつかみ取った。

 試合は序盤から主導権がめまぐるしく入れ替わる。こんなときこそ、ベテランの冷静さが求められるが、序盤は、平常心ではなかった。大会の個人本塁打通算記録14本まであと1本に迫った今大会。「どうせならと狙ってしまった」と力んだスイングを繰り返した。

 そんな精神状態でも、最後は大仕事をしてみせるのが西郷だ。九回に肩にのしかかっていたものを振り払い、目の前の打席に集中。イメージしていた通り、逆方向へ打ち上げた。「何も言わなくても最後はやる。それが彼ですから」と安藤監督もたたえた。

 西郷は、続く多幡が左中間方向へ二塁打を放つと、前を走る上田を「早く走れ」と怒鳴りつけながら疾走。上田に追いつきそうな勢いで本塁まで駆け抜けた。「連覇は意識しない。でも、頂点に届く力はある」と言い切った西郷。大樹のようにどっしりと構え、それでいて若々しい。ホンダには今年も盤石の4番がいる。【岸本悠】

 ◇「これが力の差」

 JR四国の3番・妹尾がバットでチームを引っ張った。四回2死後、ホンダ先発・武藤の高めに浮いた変化球を逃さず引っ張り、チーム初安打となる左越えソロ。1点を追う八回1死二塁では同点の中前適時打を放った。四回の一発について「第1打席が3球三振だったので、思い切って振っていこうと思った」と振り返る。もっとも、王者・ホンダに2度追いつきながら競り負け、11年ぶりの勝利を逃して「春先から強豪相手に惜しい試合をするけど勝てない。これが力の差」と唇をかみしめた。

mainichi.jp(2010-08-29)