埼玉県人、「男女平等最下位県」認定にかみつく


 東北大の研究グループがまとめた都道府県別の「男女平等度」ランキングが波紋を広げている。

 全国で初めて男女共同参画推進条例を制定し、男女平等の“先進県”を自任してきた埼玉が、まさかの最下位。「実態を反映していない」と県は反発を強めているが……。

 ◆猛反発

 ランキングをまとめたのは、東北大の吉田浩教授(公共経済学)。4月に発表され、男女平等の初の都道府県別比較として注目を集めた。

 男女平等の先進国として知られるノルウェーの統計局が採用する「男女平等度指数」を基に、教育や労働、政治参加など9項目を4段階に指数化し、順位をつけた。しかし、総合47位となった“格付け”の各項目に関係者は猛反発している。

 例えば、人口の男女比。女性の比率が高いほど高評価だ。優遇しない地域から女性が流出するとの考えに基づいており、埼玉は44位だった。しかし、県男女共同参画課の田村豊主幹は真っ向から反論する。「首都圏は労働力が全国から集まっているため、男性の比率が高い。そもそも女性が多いからといって男女平等が実現されていると言えるのか」

 都道府県議会を対象にした女性の政治参加率にも異論はある。女性議員の割合で評価され、埼玉は93人(2007年末時点)中5人で36位。田村主幹は「県議会だけ見れば確かにそうだが、市町村議会を含めた女性の政治参加率は全国3位」と話す。

 今月4日まで開かれた県議会の一般質問でも、このランキングが取り上げられ、土屋綱男・県民生活部長は「国情の違いを無視し、外国の指標をそのまま適用して比較することはあまりに安易。実態を表したものとは言えない」と語気を強めた。

 県地域婦人会連合会の片貝弥生会長(86)も「埼玉が他の地域に比べて男女平等でおくれているとは思わない」と話す。

 ◆改善余地

 一方、「最下位だとは思わないが、一つ一つ見ると、『なるほど』と思う調査項目はある」と指摘するのは、県男女共同参画審議会委員を務める連合埼玉の上杉裕子・女性委員会副委員長(42)。

 一つは、女性の労働参加率の低さだ。県内の15歳以上の参加率は男性74・6%に対し、女性48・3%で、41位。男性に比べた女性の「相対給与」に至っては全国最下位となっている。埼玉労働局によると、埼玉県は、結婚や出産を機に正社員を退職する女性が少なくなく、その結果、県内で働く女性はパートが多く、相対給与が低くなる傾向があるという。

 「子育て後の女性が職場復帰しやすい環境作りが必要」と上杉氏。県も、女性の労働環境については「問題として認識している。様々な施策でカバーしていきたい」と率直に認めている。

 調査をまとめた吉田教授は「他の地域の女性に比べ、埼玉が幸せではないと言っているのではない。埼玉の女性は埼玉の男性と比べて、もっと良くなっていい、改善の余地があるということだ」と話している。

読売新聞(2010-08-10)