ホンダ、国内生産拠点を再編 軽の新工場白紙に
車種絞り込み、環境車にシフト

 ホンダは国内の自動車生産を再編する。建設を凍結していた寄居工場(埼玉県寄居町)を2013年をめどに稼働させ、ハイブリッド車などの生産拠点とする。市場が国内に限定される軽自動車は三重県四日市市で予定していた新工場の建設計画を白紙に戻し、車種も絞り込む。ホンダは新興国などで生産を拡大しているが、日本の工場は最先端技術を世界で展開するための中核拠点と位置付けており環境車生産へのシフトを加速する。

 寄居工場は国内で約30年ぶりの新工場として06年に建設計画を発表。年20万台規模の大型拠点で、約700億円を投じ今春に稼働予定だった。08年末に建屋も完成したが、金融危機後の世界不況で内外の販売が急減。稼働の先送りを決め、生産設備の搬入・据え付けを見合わせていた。

 建設再開を決めたのは国内に加え、主要輸出先と想定する北米市場で需要が回復してきたため。さらにハイブリッド車や低燃費エンジン車の普及が世界で急速に進むのが確実。技術開発にとどまらず環境車を大量生産するノウハウの蓄積が欠かせないと判断。寄居工場をその拠点とする。

 生産車種など詳細は今後詰めるが、ハイブリッド車が中心になるとみられる。ホンダは「インサイト」などハイブリッド車を鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)で生産している。車種を広げる方針で、生産能力を確保する。

 軽自動車は事業展開を見直す。ホンダは子会社の八千代工業が持つ四日市製作所(四日市市)で軽自動車を全量生産している。新工場は既存工場の隣接地に約500億円を投じて建設、当初は年内に稼働する予定だった。建設の一時凍結ではなく、白紙撤回とする。  これに合わせ、軽自動車のうち「アクティ」など商用車の新規車両の開発は中止する方向。軽乗用車の新規開発は続けるが、販売車種の絞り込みを検討している。軽自動車は日本独自の規格で、人口減などで国内市場の伸びは期待できない。ホンダは09年度に15万8000台の軽自動車を販売、シェア9%強の3位メーカー。ホンダの戦略転換で業界の勢力図が塗り替わる可能性がある。  ホンダの国内車両工場は現在、埼玉製作所(埼玉県狭山市)と鈴鹿製作所、さらに八千代工業の四日市製作所の3カ所。合計で年130万台の生産能力がある。  ホンダは国内需要の縮小や生産現地化の加速などで、将来は国内の生産能力を年70万〜80万台程度に引き下げる方針を打ち出している。国内工場に最先端技術を担わせるなど内外の工場で役割分担を進める考え。ただ寄居工場の稼働に伴い、ほかの工場に影響が及ぶ可能性もある。

nikkei.com(2010-07-15)