二輪の国内生産、瀬戸際 09年、28年前の1割以下

 かつて世界一だった二輪車の国内生産が、瀬戸際に立たされている。2009年の生産台数は前年の半分で、ピーク時の1割以下になった。国内で生産を続けてきた日米欧向け高級車の販売が低迷したためだ。各社の新興国での生産は、より上位の車種にも広がりつつあり、回復は容易ではない。

 熊本県大津町のホンダ熊本製作所。作業しやすいよう、組み立てラインのコンベヤーの床の高さが従業員の身長などに合わせて自動で動く。約170億円を投じ、08年4月に稼働した最新鋭ラインだ。

 同時に浜松製作所から二輪車生産を集約。年50万台の生産能力を抱えるホンダ唯一の国内の二輪車生産拠点となった。だが、3本の生産ラインは昨年3月からすべて夜勤が無い昼だけの操業だ。09年度の生産台数計画は18万台で、世界全体(約1500万台)の1%まで落ち込む計画だ。

 ほかの大手も同様の状況だ。ヤマハ発動機は年約50万台、スズキが年55万台の生産能力に対して、09年の実際の生産台数はともに3分の1程度にとどまる。

 日本自動車工業会によると、国内生産は1981年の741万3千台をピークに減少が続く。若者のバイク離れに加え、各社が生産拠点を販売が増える新興国に移してきたためだ。生産世界一の座は93年に中国に譲った。09年の生産台数は前年比47.4%減の64万5千台。66年の統計開始から最大の減少率で、生産台数は過去最低の水準だ。

 09年に激減したのは、世界的な不況で、国内工場が得意な日米欧向け中心の高級車種販売が冷え込んだためだ。ただ、景気が上向いても国内生産は簡単に戻りそうにない。二輪販売が伸び続けるアジアで、より上位機種が売れ始め、現地での生産機種の「高級化」が進んでいるからだ。

 ホンダは中国から20万円前後の50ccと110ccのスクーターを輸入しているが、年度内にも排気量125ccの輸入もタイから始める。川崎重工業は、タイから輸入した「Ninja250R」(250cc)の販売を08年に始めた。

 各社はそれでも「世界の工場の指導役」として、国内工場を存続させる方針だ。ただ、ヤマハ発動機の戸上常司社長が「国内生産は今後、戻っても能力の半分にしかならない」と見通すなど、更なる生産能力圧縮も検討する。(大日向寛文)

asahi.com(2010-02-05)