日本人の祖先、東南アジア経由 DNAもとにルート分析



 日本などアジアに住む人々の祖先は、アフリカからインドに来た後、東南アジアを経由し、大陸を北上して広がった――DNAの国際研究でそんなルートが浮かんできた。10日付の米科学誌サイエンス(電子版)に発表される。

 日本や中国、シンガポールなど10カ国・地域、90人以上の科学者の共同研究。アジア太平洋地域の約70民族・集団の約2千人を対象にした。人のDNAの塩基配列の中には、個人によって微妙に違いがある場所(SNP、スニップ)がある。このうち特徴的な約6万カ所を選び出し、それぞれを比較、分析した。

 その結果、インドから東南アジア、中国、韓国、日本人へと枝分かれしていく遺伝学的な関係を表す系統樹ができた。この系統樹は、言語学や地理学上の関係とよく対応していた。移動ルートは共通の祖先がアフリカからインドを通って東南アジアに入り、その後大陸を東アジアや北アジアに移動したり、南の島々に渡ったりしたと考えられた。

 調査に参加した徳永勝士・東大教授(人類遺伝学)は「現在日本で暮らす多くの人たちは、何万年も前に東南アジアに来た人たちの遺伝子を引き継いでいると考えられる」と言う。アジア大陸での人類の移動経路については、今回の研究とは逆に、「北から南に広がった」という報告もある。共同研究者の一人、菅野純夫・東大教授(ゲノム制御医科学)は「今後、各地域の集団の起源や、遺伝学的に分かれた年代をさらに調べたい」としている。(小堀龍之)

asahi.com.(2009-12-10)