路線転換のウィンドウズ7 機能より軽快さ 22日発売


 米マイクロソフト(MS)の新しい基本ソフト(OS)「ウィンドウズ7(セブン)」が22日に発売される。前作「ビスタ」までの高機能化路線を転換、動作の軽快さを重視した。米アップルや米グーグルも攻勢をかけ、「MS一人勝ち」の環境は変わってきた。セブンはユーザーを引きつけることができるか。

■起動時間を短縮

 マイクロソフトがまずアピールするのが、セブンの作動スピードの速さだ。起動時間は前作のビスタの40秒から29秒に短縮。インターネットの閲覧ソフトが立ち上がるまでの時間もビスタのほぼ半分だ。常時作動するプログラムを減らすことで、インターネットやメールなど複数のソフトを同時に立ち上げて作業しても、あまり速さは落ちない。

 07年1月に発売されたビスタは、ネット経由のコンピューターウイルスが問題化したことを背景に、セキュリティー機能を強化。その分、パソコンに高速CPU(中央演算処理装置)や大容量のメモリーが必要で、起動に時間がかかった。このため、不評を招き、ビスタは期待ほど普及しなかった。

 セブンのもう一つの売り物は、タッチパネル機能を標準装備したことだ。パソコンがタッチパネル対応なら、画面に指で触れるだけで写真データを動かしたり、音楽を再生したりできる。

 不況で販売の鈍化に悩むパソコンメーカーは、セブンの登場を販売てこ入れの材料にしたい考えだ。各社はこぞって対応商品を投入。ソニー、富士通は一部の機種でタッチパネル対応機種を22日に発売するほか、NECも投入する。ソニーのVAIO事業本部の赤羽良介副本部長は「パソコン市場全体の盛り上がりを期待している」と話す。

■低価格機にも搭載可能

 MSはこれまで、新作OSを出すたびに機能を向上させてきた。それに伴い、ユーザーはパソコンの高度化を迫られ、買い替え需要を掘り起こすことになった。セブンはパソコンのCPUやメモリーの大容量化をしなくても、スムーズに使えるという。

 マイクロソフトのダレン・ヒューストン副社長は「ビスタはとにかく『堅牢(けんろう)さ』を追求した。批判も受けたが、時間をかけて消費者のニーズに合うよう改善を重ねた」。

 「方針転換」の背景にあるのは市場環境の変化だ。「高機能化」へのニーズは一段落し、最近は安価なネットブックが普及。日本ではノート型の3割を占める。台湾メーカー、エイサー日本法人のボブ・セン社長は「これまでのOSは高機能化が進みすぎ、パソコン価格の上昇も招いた。セブンは、低価格のネットブックにも搭載でき、我々には追い風」と歓迎する。

 競合環境も激しさを増している。米グーグルは10年にも無料パソコン用OS「クローム」を提供する。新興国でも普及が見込める低価格パソコンのユーザーを取り込むためだ。さらに、米アップルの「iPhone」のように、パソコンと同様の機能を持つ携帯端末も多様化している。

 ウィンドウズは、世界のパソコンの約9割で使われるOSの「巨人」だ。だが、これまでの拡大路線には限界が出てきた。ユーザーが買い替えたくなる魅力を発し続けられるかどうか。セブンはその試金石だ。(五十嵐大介)

asahi.com.(2009-10-15)