モーターショー しぼむ「東京」

 2年に1度の東京モーターショーが21日、千葉市の幕張メッセで始まった。世界5大自動車ショーに数えられているが、41回目の今回は不況のあおりと日本市場の地盤沈下を受け、海外勢の大半が参加を辞退。展示車も市販が前提の常識的なものが多く、「夢の車」の見本市としての存在感は薄れている。一般公開は24日から11月4日まで。

 ■出展半減、海外勢3社

 トヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」のブース。エンジン音が響き渡る中、天井からつった白い布が落とされ、スポーツカー「LFA」が姿を現した。排気量4.8リットルで560馬力のV型10気筒エンジンを搭載。10年末から500台限定販売する3750万円の超高級車だ。

 自ら開発にも携わった豊田章男社長が運転席から降り立ち、「車を好きになってもらえるように努力した」と運転する楽しさを訴えた。  しかし、こうした演出の一方で、会場には例年にくらべ「質素」な雰囲気も漂う。出展企業は前回07年の246社から、113社に減り、展示の総面積も前回の半分。なかでも、技術と斬新なデザインを競ってきた海外自動車メーカーは大半が姿を消し、参加は26社から3社にまで減った。

 主催者の日本自動車工業会(自工会)によると、今回の募集を締め切った昨年10月には、海外から17社が申し込みを済ませ、数社が検討を続けていた。だが、世界的な景気後退を受け、独メーカーや米ビッグ3など辞退が続出。韓国の現代自動車はショー直前の9月20日ごろに「本社の方針変更で出品できなくなった」と連絡してきた。

 自工会は一度参加を見送った英国メーカーから、出展料の割引で参加をとりつけ、さらに会員企業の過去の名車などでなんとか「空き地」を埋めた。

 目新しいアイデアが売りの「コンセプトカー」(試作車)も、市販を意識した現実的なものになっている。コンセプトカーの製作費は1台1億円ほどとされ、業績の厳しいメーカーには重荷になるからだ。

 ■日本市場には期待薄

 地盤沈下の理由は不景気だけではない。日本市場の魅力の低下も背景にある。

 自工会の見通しでは、09年の国内新車販売台数(乗用車)は405万台。5年続けて減り、ピークの90年より2割少なくなった。人口減少で今後も大きな成長は期待できない。縮むパイも国産メーカーがほぼ独占。日本自動車輸入組合によると、乗用車販売に占める08年の輸入車シェアは7.4%。米国では33.4%、ドイツは35.1%だ。

 お隣の中国市場は、09年の新車販売台数で世界一になる可能性が高く、今後も成長が確実とみられる。4月の上海国際モーターショーには、不景気の中でも、欧米有力メーカーや現代自動車を含む1500社が出展した。

 先進国市場でも9月の独フランクフルトモーターショーには781社が参加。欧州メーカーの日本法人幹部は「フランクフルトは『欧州全体のショー』との位置づけだが、東京は日本市場向けだけ。中国の成長が著しいなか、景気が戻っても次回の東京に出展するかは微妙だ」と話す。

 ■環境前面 特色づくり

 国内メーカーが今回のショーで展示に力をいれたのは、二酸化炭素排出量の少ない「エコカー」だ。

 日産自動車のカルロス・ゴーン社長は前後2人乗りの電気自動車の試作車「ランドグライダー」に乗って登場し、「ゼロ・エミッション(排出ゼロ)時代の到来」を力説。10年末に販売を始める「リーフ」に加え、12年以降にさらに3車種の電気自動車を売り出す方針を明らかにした。

 ホンダの伊東孝紳社長はハイブリッド車の普及が最優先と述べ、来年2月に発売するスポーツ型のハイブリッド「CR―Z」などを紹介した。

 ただ、エコカー開発にしのぎを削るのは欧米メーカーも同じ。フランクフルトショーの展示も主力はエコカーで、「東京」を特徴づけるには力不足だ。

 自工会はショーの在り方をめぐる議論を始めており、来年春には方向性を出す。フランクフルト直後との開催時期の変更も検討。岡雅夫モーターショー室長は「海外メーカーは放っておいても戻ってこない。個性がないともうだめなのは確かだ」と話す。

asahi.com.(2009-10-21)