都市対抗野球:Honda、接戦制し決勝へ トヨタと激突

 第80回都市対抗野球大会(毎日新聞社、日本野球連盟主催)は第11日の31日、東京ドームで準決勝を行った。第2試合は、Honda(ホンダ、狭山市)がNTT東日本(東京都)とのシーソーゲームを3−2で制し、5年ぶりの決勝進出を果たした。ホンダは和光市代表として優勝した67回大会(96年)以来13年ぶりの黒獅子旗奪還を目指し、1日の決勝(午後6時)でトヨタ自動車(豊田市)と対戦する。

 ○Honda(ホンダ、狭山市)3−2NTT東日本(東京都)●

 ホンダが一進一退の攻防を制した。七回、田浦と岡野の連打で1死一、三塁とし、佐伯がスクイズを決めて同点。さらに2死二塁から小手川の遊ゴロが敵失を誘い、決勝点を挙げた。先発の大田は制球に苦しみながらも六回途中2失点で踏みとどまり、筑川がロングリリーフで好投。逆転の流れを作った。

 NTT東日本は六回、平野の犠飛と竹内の内野安打で2点を挙げて逆転。木城も粘り強く投げたが、正念場での守りのミスが痛かった。 

 ▽ホンダ・安藤強監督 エンドランを空振りで失敗した後、あんな当たりで決勝点とは。本当に野球は何が起こるかわからないですね。

 ▽NTT東日本・垣野多鶴監督 初球スクイズとは……。もう少し点が入れば楽なんだが。黒獅子旗を狙う課題をたくさんもらった。

 ◇ホンダ、意表突く同点スクイズ

 外野スタンドには「強弾炸裂(さくれつ)」の文字。あと1本出れば、大会記録に並ぶホンダ・西郷の14本目の本塁打を期待する横断幕だったが、勝負を決めたのは自慢の強打ではなく、足や犠打を絡めた機動力だった。

 1点を追う七回1死、ホンダは続けざまに安打を放つ。安藤監督はここが勝負の分かれ目と判断。次々と代走を繰り出した。1死一、三塁。打者・佐伯の初球だった。間髪入れずにスクイズを敢行。相手投手は一瞬、虚をつかれ、懸命のグラブトスも間に合わなかった。「ここぞという時にやる」という秘策で、試合を振り出しに戻した。

 03年の決勝。当時、三菱ふそう川崎(川崎市)を率いていた敵将の垣野監督は調布市・シダックスの野村監督(現・楽天監督)を向こうに回し、初球スクイズを成功させて試合を決めた。その同じ手を食らわされた名将は「まさか初球とは」と悔しがった。

 安藤監督はさらに動く。続く小手川の打席では、一、二塁走者を走らせてヒットエンドラン。結果は空振りで二塁走者を刺されたが、積極采配(さいはい)が試合の雰囲気を変えた。小手川のたたきつけた内野ゴロを遊撃手が後逸。決勝点が入った。

 96年以来の優勝にあと1勝と迫った安藤監督。「明日は、やってきたことをすべて出したい」。強力打線だけでは、頂点に立てないことを指揮官は知っている。【田原和宏】

 ○…ホンダの岡野が二回に先制の左前適時打、七回にも1死一塁から逆転をおぜん立てする右前打を放った。どちらも追い込まれてから、バットを短く持って「食らいついた」。準々決勝も本塁打を含む2安打で、この2試合で5打数4安打。今年から加入した西郷の打撃の「しぶとさをお手本にしました」という。長野、西郷ら強打者が並ぶ重量打線に「負ける気がしない」。中盤にリードされてもあわてず、主将として、打撃でもチームを引っ張った。

 ○…「アウトにしたかった」。七回にホンダがスクイズを成功させた場面。東京都先発の木城は防げなかったことを悔やんだ。だが、低めの制球と緩急を駆使して大会随一の狭山市打線を六回まで5安打1失点。無四球でリズム良く、野手も好守でもり立てた。2年前にJR東日本(東京都)の補強で決勝のマウンドに立った。「緊迫感のある決勝の舞台に後輩を連れていきたかった」。準決勝の敗退は、その思いをさらに強くした。

mainichi.jp(2009-09-01)