都市対抗野球:Honda、三菱神戸を降し準々決勝進出

 第80回都市対抗野球大会(毎日新聞社、日本野球連盟主催)は第9日の29日、東京ドームで3回戦3試合。第3試合は、Honda(ホンダ、狭山市)が5−4で三菱重工神戸(神戸市)を降し、準々決勝に進んだ。

 ○ホンダ(狭山市)5−4三菱重工神戸(神戸市)●

 ホンダは同点の七回、左前打の西郷がバントと暴投で三塁に進み、内野ゴロで決勝のホームを踏んだ。西郷は三回にも2ランを放つなど活躍。三菱重工神戸は六回、大久保の3ランで追いつき、好守などで再三相手の猛攻をしのいだが、最後は狭山市打線が上回った。 

 ○…ホンダの先発・筑川が六回途中で、左太ももに張りを訴え降板。右腕の須田が急きょ、2番手としてマウンドに上がった。「様子見で投げた」という初球のカットボールが甘く入り、同点3ランを打たれた。「頭の中が真っ白になりました」。次打者にもカウント0−3とし、4球目にようやくストライクを入れて気持ちが落ち着いた。その後は最後まで変化球の切れがよく、内野安打1本に抑え込んだが、「筑川さんの勝利投手の権利を奪い申し訳ない」と、好投したエースを気遣っていた。 

 ○…3点を追う六回1死一、二塁。三菱重工神戸の大久保は、打席に入る前に大川監督に耳打ちされたという。「失敗を取り返そうと思うな」。それまでの2打席でいずれもバントを失敗したことを気遣った一言だったが、これが効いた。代わったばかりのホンダの2番手・須田の初球をたたくと、打球は左翼席に飛び込む同点3ランに。新日鉄広畑から補強の大久保は「あの一言で振り抜くことに集中できた。補強選手に力を発揮させてくれる雰囲気はチームに持って帰りたい」と力を込めた。

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 ■熱球

 ◇37歳・西郷劇場 先制打に豪快2ラン、決勝点も演出

 狭山市の「西郷劇場」だった。

 一回に先制打、三回に2ラン。七回は先頭で左前打を放つと犠打などで三進し、小手川のライナーを投手がはじいた瞬間、本塁へ猛然と突っ込み、勝ち越しの生還を果たした。

 「あれをファウルにしないんだから」と神戸市の大川監督を脱帽させたのは三回の本塁打。厳しい内角の直球だったが、左打席の西郷は「引っ張るボールを狙っていた」。体を早めに開きつつ、豪快なスイングでしっかりと上からたたいた打球は、一塁側のホンダ応援団が見守る中、右翼ポールを直撃した。

 通算本塁打数で歴史的記録に迫る。だが、アーチだけが西郷の魅力ではない。バットを寝かして担ぎ、さらに揺らして投球を待つ。その特有の構えから、時に狙い球を絞って強振し、時に懐深くボールを引きつけてヒットゾーンに運ぶ。七回を例に見れば、外角攻め一辺倒の中、「長打にできる球がなかった」とチャンスメークに徹し鮮やかな流し打ちをみせた。

 先制打の時は塁上で笑顔を振りまき、本塁打ではダイヤモンドを回りながら小さくガッツポーズを繰り返した。「チームの雰囲気が自然とそうさせる」。休部となった三菱ふそう川崎から移籍した今季。30日で37歳になる。19年目の新天地でミスター社会人が新たな輝きを放っている。【吉見裕都】

mainichi.jp(2009-08-30)