都市対抗野球:開幕戦、Honda熊本がTDK降す

 第80回都市対抗野球大会(毎日新聞社・日本野球連盟主催、東京ドーム)第1日の21日は1回戦3試合。開幕試合のHonda熊本(ホンダ熊本、大津町)−TDK(にかほ市)は、終盤に集中打を見せたホンダ熊本が6−3でTDKを降し2回戦に進出した。

 ○Honda熊本6−3TDK●

 ホンダ熊本が好機の集中打でにTDKを振り切った。四回、熊丸の左越え2ランなどで3点先取。五回に同点とされたが、八回に藤野の左前適時打などで3点を勝ち越した。TDKは五回に2本塁打で追いついたが、その後は大津町の継投にかわされた。 

 ▽ホンダ熊本・渡辺正健監督 熊丸の先制本塁打が大きかった。あれで主導権を握れた。それにしても東京ドームは球がよく飛びますね。

 ▽TDK・佐藤康典監督 本塁打2本で追いついたが、そこから1本が出なかった。継投を間違えたという思いはある。  

 ◇「スクイズない」…藤野、渡辺監督の指示で吹っ切れ決勝適時打

 犠打を絡め、確実に得点を重ねて勝ち上がった予選とは戦い方が違っていた。この日のホンダ熊本は犠打ゼロ。その象徴的な場面が決勝点を挙げた八回の攻撃だった。1死一、三塁。打席に向かった藤野に渡辺監督は短くつぶやいた。「スクイズはない。打っていいぞ」

 ホンダ熊本は九州地区予選4試合で犠打20を数えた。藤野は準決勝で決勝スクイズを決めるなどバントはお手のもの。だから、主将の深沢は藤野のバットがスイングの軌道を描き始めると驚いたという。カウントは1−1。「スクイズがあるならここだと思った」

 むろん、打席の藤野の心境は違う。「あれで吹っ切れた。打つことだけに集中できた」。TDKは切り札の野田を投入したが、藤野は相手投手の特徴だけでなく、球種やコースすら念頭になかった。あったのは「振り抜く」という意識だけ。内角の直球に詰まりながらも、三遊間を破る決勝適時打を放ち、指揮官の期待に応えた。

 ホンダ熊本の安打は集中打を見せた四回と八回に放った計8本。3人の補強選手の加入で打線の厚みを増した証しだが、好機は数多くあるわけではない。「次はウチらしいバントでつなぐ野球を見せたいね」と渡辺監督。ヘッドコーチとして02年の準優勝など黄金時代を知るだけに、気を引き締めることも忘れなかった。【田原和宏】

 ○…必勝リレーがピタリと決まったホンダ熊本。抑えの山中は「自分の力を出し切れた」と気持ちよさそうに汗をぬぐった。八回表に3点を勝ち越し、その裏からマウンドに立つと本大会初登板とは思えない落ち着いた投球で3者凡退に。九回は1死から右前打を許したが、後続2人を右下手からの切れのある直球でともに空振りの三振に仕留め、「狙ったわけではないけれど」と言いながら、してやったりの表情だった。

 ○…TDKの新人、菅原が大舞台で社会人の公式戦初本塁打をマークした。3点を追う五回無死一塁から初球の真っすぐをフルスイング。「完ぺきだった。打った瞬間、入ったと思った」と手応え十分の当たりは右翼席に飛び込み、チームに反撃ムードを呼び込む2ランとなった。だが、六回の勝ち越し機は見逃し三振に倒れた。チームは今年3月、TDK千曲川と統合。「統合後、最初の1勝を挙げたかった」と悔しさをにじませていた。

mainichi.jp(2009-08-21)