「トヨタの生産技術の方向性は大きく変わった」
生産技術本部長の井川氏が講演

 トヨタ自動車の専務取締役で生産技術本部長の井川正治氏は2009年4月8日,同日から始まった「INTERMOLD 2009 第20回金型加工技術展」(東京ビッグサイト)で「激変の時代〜ものづくり・生産技術の方向性」をテーマにした基調講演を行った。その中で,同社の生産技術の方向性が大きく変わっていることを明らかにした。きっかけは,もちろんリーマンショックを契機とした自動車販売の世界規模の激減である。

 まず,世界全体で1500万台分の販売台数減が2008〜2010年まで続くという厳しい見方があり,生産技術はこうした見方を前提にしなければならない,という認識を示した。それに対し,これまでのトヨタ自動車の生産技術は「顧客ニーズを先取りした商品改革と,グローバル展開できるラインと設備」を目指してきたと説明。その結果,鍛造,鋳造,射出成形,プレス,車体溶接システムなどで「革新的な成果を上げてきた」(同氏)。ところが,こうした生産技術は,生産台数の規模を重視する傾向になっていたという。例えば,日本で開発した新車のグローバル生産を一気に立ち上げる「世界同時立ち上げ」の手法は,大量に売れる市場環境に合致しているが,「今回のように急激に販売が減った時には対応が難しい」(同氏)と話す。

 「今後は,(今以上に)地域に密着したラインアップを充実させていく。そのためには『小規模生産』『多車種混流生産』『低コスト』がキーワードになる。小さく構えて,(設備を)汎用的に活用し,小ロット生産に対応するのが今後の生産技術の方向性」(同氏)と語った。

nikkeibp.co.jp(2009-04-08)