ホンダ、インド2輪車市場を独走
逆風下でも好調な理由

 インドの2輪車市場は浮き沈みが激しく、2007年4月〜2008年3月(以下2007年度)の売上高は前年同期比4.8%減を記録。2008年4〜12月の3四半期の売り上げもわずか1.85%増にとどまった。今回の景気後退に見舞われる前の10年間、毎年2ケタ成長を遂げてきたのとは対照的だ。

 大手2輪車メーカー各社が、売上高の低迷及び利益率低下への対応に追われる中、一人勝ちしている企業がある。市場トップシェアを誇り、常に群を抜いて他社を引き離してきたヒーローホンダだ。

 同社は2007年度、市場シェアを1%伸ばし42%を記録。2008年4〜12月の9カ月間では、さらに市場シェアを約46%に増加させた。他の2輪車メーカーが緩やかな成長にとどまる一方で、同社は売り上げを前年同期比11%も伸ばした結果である。

 競合他社が苦戦する中、一体いかにして業績を伸ばしてきたのか。「当社が市場をリードしているのは景気後退が始まる前から万全の防御策を講じてきたからだ」とヒーローホンダのアニル・ドゥーア副社長は話す。

 ヒーローホンダの経営陣によれば、同社の最大の強みは全セグメントに及ぶ幅広い品揃えにある。同社は売り上げを伸ばすべく、2008年9〜12月の3カ月で様々なセグメントに計7種類もの新モデルを次々に投入した。ドラット・キャピタルの証券アナリスト、ナヴィン・マッタ氏は、「(ヒーローホンダは)販売を主力モデルの『スプレンダー』や『パッション』に依存し過ぎているとの指摘がかねてあったが、今回は新型モデルを相次いで投入、主力モデルに依存しているとのイメージを払拭したことが大きい」と指摘する。

 同社は、新商品の投入効果を最大限にするため、入念なブランド構築に取り組んできた。モデルごとに、それぞれが明確なイメージを確立すべくキャンペーンを展開し、需要を掘り起こしてきたのだ。「各商品の焦点を明確にして、それぞれ宣伝も差別化している」とドゥーア副社長は説明する。

 「つまり、例えば廉価版のエントリーセグメントに作った販促戦略は、特定の顧客層を念頭に置いたプレミアムセグメントの販売戦略とは全く異なる」と続ける。こうしたきめの細かい戦略を展開することで、主要ブランドの売り上げ拡大を実現。エントリーセグメントの「CDデラックス」から、デラックスセグメントの「グラマー」、新型モデル「スプレンダーNXG」「スプレンダープラス」「パッションプラス」、及びプレミアムセグメントの「ハンク」「CBZエクストリーム」「カリスマ」まで全セグメントにおける販売台数の増加に結びつけた。

nikkeibp.co.jp(2009-03-23)