後発の韓国市場でホンダ、絶好調
進出4年目にして輸入車市場で首位

 2008年は「ホンダコリアの年」だったと言っても過言ではない。

 韓国におけるホンダコリアの販売台数は昨年、前年比74%増の1万2356台を記録。輸入車としては初めて年間販売台数が1万台を突破した。その結果、2007年に年間販売台数7618台で首位だったBMWを抜き去り、韓国市場上陸4年目にして輸入車市場トップの座に就いた。

 ホンダコリアが輸入車市場で1位になることは、昨年の初めから予想されていた。ホンダの韓国進出は2004年5月。以来、発売開始から35カ月でホンダコリアは2007年4月に累積販売台数が1万台を突破、輸入車の中では最短記録だった。さらに13カ月後の2008年5月には、累積販売が2万台を超え、ここでも最短記録を塗り替えていたからだ。

 その後も、毎月1000台以上の売り上げを続け、2007年の3位から一気にトップの座に上り詰めた。新車販売ランキングの上位5車種もすべてホンダコリアが占めた。セダンの「アコード3.5」が1位、多目的スポーツ車(SUV)の「CR-V」と「アコード2.4」がそれぞれ3位と5位に選ばれた。

顧客満足度でも全項目で1位

 販売台数だけではない。同社は消費者の満足度評価でも1位に選ばれた。世界的リサーチ会社のマーケティングインサイトが発表した「消費者のクルマに対する評価・態度に関する調査」でも、ホンダコリアは輸入車部門で「総合満足度」1位となった。2位はレクサス、3位はメルセデス・ベンツだ。

 このほか、「アフターサービス満足度」「外車で最も購入したいクルマ」「再び購入したいクルマ」でも1位になった。一方、輸入車「品質に対するストレス」部門では、2年連続でストレスが最も低いブランドと評価された。これは3年前に始めた調査で、輸入車を購入した消費者を対象に、「クルマを使いながらどのようなストレスを受けたか」を18項目にわたって質問し、100台当たりの平均値を算出したもの。今回の調査で、ホンダの品質に対するストレスは、2位にランクされたBMWよりも2倍以上低かった。

「アキュラ」でなくあえて「ホンダ」ブランドで展開した理由

 ホンダコリアのチョン・ウーヨン社長はこう話す。「最初、『アキュラ』ブランドではなく『ホンダ』ブランドのクルマを輸入しようとしたら、多くの関係者に高級車でなく、中・低価格の輸入車で生き残れるはずがないと指摘された。しかし、当時、輸入車市場はレクサス、BMWがシェアを抑えていただけに、韓国では知名度がほとんどないアキュラより、知名度のある『ホンダ』ブランドで新たな道を展開した方がいいと判断した」

 ホンダが韓国に進出した2004年当時、韓国で輸入車を買おうとする人は富裕層の消費者が中心だった。輸入車を選ぶのは、安全確保はもちろんだが、自らの経済力を誇示することが狙い。それだけに、誇示できる効果が劣る中・低価格車で、勝負できると考える人はいなかったのだ。

 だが、チョン社長は、輸入車も合理的な価格で、消費者が満足するようなサービスを提供すれば可能性は十分にあると判断した。実際、チョン社長がホンダブランドのクルマの輸入販売に乗り出してから、一貫して力を入れてきたのが販売台数ではなく、顧客サービスだ。

 同社自慢の顧客管理プログラムはいくつかある。その代表が「生涯顧客管理」だ。クルマを購入してくれた顧客には、営業マンとサービスマンが1つのチームとなって張りつき、買い替えまで1対1の管理を続ける。また、クルマを購入して走行距離が6万キロメートルになるまでは、いつでも無料でサービスを受けられる「24時間出動サービス」も提供する。

 一方、販売店には板金や塗装などの修理設備を完備させ、クルマの購入からアフターサービスまで、購入した販売店ですべて解決できる体制も構築した。こうした取り組みは今やほかの輸入車ブランドがベンチマークするほどだ。

 このホンダコリアの戦略は、実利を重視する30〜40代の消費者に受け入れられた。3000万ウォン(約200万円)前後という手頃な価格は、輸入車市場では従来、顧客層と考えられていなかった30代サラリーマンまで引きつけたうえ、性能とサービスがいいという口コミが広がり、顧客が増えていったのだ。

とはいえ、悩みは円高

 もっとも万事順調というわけではない。「今や円高で、1台売るごとに大損をする」とチョン社長は打ち明ける。それでも販売を中止するわけにはいかない。チョン社長にとって今年最大の課題は、首位確保でも販売台数の更新でもない。赤字幅を最小限に抑えながら、会社の規模を保てる販売台数は何台かを見極めることだ。

 同時に今年は、小型車と環境に優しいクルマの販売に力を入れる方針だ。誰もが不可能と断言した中型車の販売で神話を創り出したように、今年は小型車で輸入車市場に挑む。

 チョン社長は、ホンダが技術供与をしていた韓国の2輪車メーカー、大林自動車に1976年に入社、2000年に同社の社長に就任した。1年後の2001年、ホンダが、大林自動車との提携を解消し、ホンダが設立したホンダモーターサイクルコリアに社長として移籍した。チョン社長を長年見てきたホンダが新会社の社長就任を打診、これをチョン氏が快く受け入れたのだった。

 ホンダモーターサイクルコリアは2003年、4輪車の販売を始めるため、社名をホンダコリアに変更した。ちなみに、同社は昨年、韓国で2輪の小型・大型部門でも販売台数で1位となった。 (By キム・ソヨン記者 c「毎経エコノミー」2月11日号)

nikkeibp.co.jp(2009-02-09)