ハイブリッド比率「1割」を宣言したホンダ、
あの怪物コンパクトにも設定?

 ホンダがハイブリッド車(HV)での本格攻勢を宣言した。福井威夫社長が19日の年末定例会見の席上、同社の世界販売に占めるHV比率を「2010年頃には10%程度とイメージしている」と表明したもので、2009年以降は新モデルを相次いで投入する。

 ホンダの環境性能追求は「内燃機関(=ガソリンエンジンやディーゼルエンジン)の改良が主体」(本田技術研究所の加藤正彰社長)であることに変わりないが、トヨタ自動車に独走を許してきたHV分野で一気の追い上げを図る。

 2009年に新モデルを発売、年20万台の販売を目指す
 福井社長は同日の会見で、2009年に投入予定の新型の専用HVに搭載するハイブリッドシステムで「大幅なコストダウン」が達成できる見通しも明らかにした。福井社長はかねて、HVの本格普及には同等の走行性能を持つガソリン車との価格差を「20万円以内」にすることが必要と強調してきた。

 しかもメーカーが無理をせず「販売部門にも利益がきちんと残るビジネスベースに乗せて」である。福井社長の口ぶりからは、そのメドが立ったという自信が漂っていた。現行の「シビック・ハイブリッド」の場合、ガソリン車との価格差は33万円程度だが、まだ相当な「無理」をしたうえでの価格差と想像できる。

 福井社長の自信を裏づけるように、2009年に投入する新専用車は世界で年20万台の販売を前提に開発を進めている。1999年秋に初のHV「インサイト」を発売して以来、今年11月までのHV累計販売が23万6000台であることを考えると、20万台がいかに大きなボリュームかが分かる。

 この新モデルに続いて、2009年ないし2010年には、今年の東京モーターショーに出品したコンセンプトカー「CR−Z」をベースにした「スポーツHV」も「日米欧を中心とした世界に投入する」(福井社長)方針だ。

 販売増の施策は既存モデルへの展開か
 しかし、それでも2010年頃に全販売台数の「10%」をHVとするにはコマ不足だろう。ホンダは2010年の世界販売を「450万台以上」と想定し、この数字は半ば経営公約的に公表している。その10%だと45万台程度という大きな数字になる。トヨタの今年のHVシリーズの世界販売がちょうどこのレベルだ。ちなみに「シビック・ハイブリッド」を主体とするホンダの今年のHV販売は、5万5000台程度でしかない。2009年以降に年20万台の新専用車や「スポーツHV」を投入しても、10%には到底届かない。

 そこで想定されるのが、既存モデルへのHV展開だ。ホンダのハイブリッドシステムは「IMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)」と呼び、モーターは基本的にエンジンのアシストだけをする「パラレル」方式だ。

 エンジンで発電も行うトヨタの「シリーズ・パラレル」方式に比べて簡便でコンパクトなシステムとなっている。「シビック・ハイブリッド」の場合、モーターの厚さは約6センチであり、しかもモーターのローター(回転体)はエンジンのフライホイール(はずみ車)の役目も担っている。

 既存のエンジンのフライホイール部分にモーターがほぼ収容できるのだ。ほかにシステム制御装置や2次バッテリーが必要なのは当然だが、それでもガソリン車として開発したクルマへのハイブリッドシステム搭載は、トヨタよりはるかに容易なのである。

 そこで、ここから先は筆者の全くの空想の世界なのだが、あっと驚くような車種にもHVが設定されるのではないか。例えば、怪物コンパクトカーに育った「フィット」や軽自動車などである。フィットが無理なら、そのセダンタイプである「フィット・アリア」(海外では「シティ」)なども、トランク容量が広大なのでスペースが必要なHVには向いている。

 軽は、ダイハツ工業が商用車「ハイゼットカーゴ」に2005年からHVを設定しているが、現状では乗用車にはない。ホンダならやれそうなチャレンジではないか。 <<池原 昭雄>>

business.nikkeibp.co.jp(07-12-21)