梅雨入りは記録的な遅さか 前線北上せず、渇水の懸念

  
  平年なら関東甲信までが梅雨入りする8日、今年は梅雨前線がなかなか北上しない。1日に九州南部が梅雨入りした後、列島の南に停滞したままだ。来週も晴れた日が続く見込みで、各地の梅雨入りは記録的な遅さになりそうだ。春先からの少雨に続く梅雨入りの遅れで、各地の取水制限や節水の呼びかけが始まった。

 8日は平年なら、東海と関東甲信地方が梅雨入りする日。しかし、天気図を見ると、梅雨前線は列島のはるか南にかかっている。今年の梅雨入りは、沖縄が平年より8日遅い5月16日、奄美地方は観測史上最も遅い記録と並ぶ5月26日と、遅めの北上だった。

 気象庁によると、この週末は上空に寒気が入り、大気の状態が不安定となるため各地で雷雨が多そう。しかし、週明けとともに晴れた日が続き、1週間程度は梅雨前線が北上する気配はないという。九州北部や四国は、最近30年間では最も遅い梅雨入りになる見込みだ。

 梅雨前線は、オホーツク海高気圧からの冷たい空気と太平洋高気圧からの暖かい空気がぶつかってできる。今年は偏西風の蛇行が大きく、寒気が南下して、前線の北上を抑え込んでいる。

 春先からの少雨に加え、梅雨入りが遅れていることから、各地のダムの貯水量は減り続けている。首都圏の水がめとなる利根川水系8ダムの貯水量は平年の82%で、6月のこの時期としては過去最少。首都圏が渇水となった94年や96年の貯水量を下回っている。

 国土交通省によると、全国の1級水系のうち、四国の吉野川水系や三重県の宮川水系など6水系で取水制限が行われている。四国の早明浦ダムの貯水率は48%に下がり、8日から第2次取水制限が始まった。

 気象庁は今後、太平洋高気圧の勢力は強まり、前線は北上するとみる。一方で、世界的に異常気象をもたらす「ラニーニャ現象」が来週中にも発生する見込みで、日本付近の太平洋高気圧は平年以上に強まるとみる。ラニーニャ現象が起きた時の梅雨明けは、早まる傾向がみられ、遅かった梅雨前線は列島を足早に北上する可能性が出てくる。

 同庁の3カ月予報(6〜8月)では、夏場の降水量は少ないと予想される。国土交通省や自治体は、「今後の雨の降り方によっては夏場の渇水が懸念される」として、節水を呼びかけている。(大久保泰)

asahi.com(2007-06-08)