収益力の「偏在」進む世界の乗用車メーカー


 自動車各社の2006年度決算が出揃ったところで、世界の乗用車メーカーの連結純利益をランキングしてみた。対象とした円換算値で1000億円以上の企業は、2005年度の10社から8社に減少した。また日米大手で明暗が分かれるなど、収益力の偏在がより明瞭になった格好だ。

 各社の純利益を外国メーカーは2006年12月期、日本メーカーは2007年3月期で比較した。8社のうち増益となったのは、2005年度に厚生年金代行返上益という特殊要因があったため、実質増益と見てよいホンダを含む5社。


 いずれも日本およびドイツメーカーであり、逆に大手2社が赤字だった米国、さらにベスト10の常連からすべり落ちたPSA(プジョーシトロエングループ)など、フランス勢の不振が目立った。

 日産が後退し、ダイムラークライスラーが浮上
 トップは、営業利益を初めて2兆円に乗せ、純利益もほぼ2割の大幅増益としたトヨタ自動車()。2001年度に米ゼネラル・モーターズ(GM)を抜いて以降、6年連続で世界の儲け頭の座をキープした。2位に対して1兆円を上回るリードであり、圧倒的な収益力だ。

 2位は2年連続でホンダ()だった。同社も2005年度の特殊要因を除くと実質15%の増益と高い伸びを確保した。日本の大手3社は、2003年度から3年連続してトップ3を占めていたものの、その一角だった日産自動車()が7年ぶりの減益で、5位に後退した。

 代わって3位に浮上したのはダイムラークライスラーだ。米投資会社サーベラスへの売却が決まった北米クライスラー部門は11億ユーロ強の営業赤字に転落したものの、メルセデス乗用車部門やトラック部門の好調で7年ぶりにトップ3に返り咲いた。販売の回復とともに、2005年から取り組んだメルセデス部門の人員削減など、リストラが寄与している。

 ダイムラー同様にリストラに取り組んできたフォルクスワーゲン(VW)も2年連続の増益を確保。純利益は前年比2.4倍と大幅に伸ばして前年の9位から7位に上昇した。主力のVW乗用車部門の営業利益が2.7倍に回復したほか、高級車アウディ部門も約4割の増益だった。

 2005年と同じ6位につけたBMWも大幅な増益で、2年ぶりに過去最高を確保した。プレミアムブランドのBMW乗用車部門は、世界市場で2年連続してメルセデスを抑えてトップ。欧州メーカーでは最も安定した同社の収益力を支えている。

 米大手2社は赤字でランク対象外
 カルロス・ゴーン氏がCEO(最高経営責任者)兼務で率いる日産・仏ルノーは、いずれも販売台数がマイナスとなり、2ケタの減益となった。円換算値では、大幅なユーロ安となったため、ルノーと日産の純利益は逆転した。もっとも、ルノーの純利益のうち6割強に相当する約19億ユーロは、子会社である日産の持ち分利益を反映したもの。日産の利益の相当部分がダブルカウントされた形となっている。

 2004年に初めてべスト10入りし、2005年には7位につけていた韓国の現代自動車(単体純利益ベース)は、長期のストライキやウォン高の影響で34%の大幅減益となった。グループの起亜自動車を含む2006年の世界販売は6%増の372万台で、ホンダや日産を上回る世界6位だったが、収益力は踊り場を迎えている。

  一方、危機的な経営が続く米大手2社は、いずれも赤字でランク対象外。2004年にはGMが5位、フォード・モーターは6位と何とか面目を保っていたものの、2005年にはGMが赤字転落、昨年はフォードが過去最悪の赤字を計上した。

 今期2007年度は、世界販売台数でトップに立つのが確実視されるトヨタが引き続き収益力でも2位以下を大きく引き離して独走する。2008年3月期の予想純利益は1兆6500億円とほぼ横ばいとしている。

 今期減益予想としたホンダとともに、為替レートを円高に想定したほか、両社とも最大の収益源である北米市場での販売をやや慎重に見ている。日本勢の優位は揺るがないが、クライスラーの分離で営業収支が大幅に改善するダイムラーや、回復が本格軌道に乗ってきたVWなど、ドイツ勢の追い上げも際立つことになる。 <<池原 照雄>>

business.nikkeibp.co.jp(2007-05-11)

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