トヨタとホンダ、F1バトル「環境」「GP誘致」…
  
 トヨタ自動車とホンダがF1で火花を散らす。「地球」を描いた車体でホンダが「環境保護」を訴えれば、トヨタは得意のハイブリッド技術に磨きをかける。F1日本グランプリ(GP)の開催地をトヨタ系が奪還すると、ホンダ系が巻き返しに動く。

 今季のF1開幕戦のオーストラリアGP決勝。赤や白のマシンの群れの中、青と緑が鮮やかな「地球」を描いたホンダのマシンが目を引いた。

 ホンダは今季、スポンサー企業のロゴをやめ、F1マシンを環境保護の広告塔にした。スポンサー企業には、マシンの絵などを商品や販売促進に使ってもらう。オリンピックの公式スポンサーが五輪マークを宣伝活動に使えるのと同じ手法だ。

 昨年まで、「ラッキーストライク」で知られる英たばこ大手のBATがメーンスポンサーだった。しかし、たばこによる健康被害に対する批判を背景に、BATは広告の自粛を決定。代わりの大口スポンサーを見つけるのは難しく、企業メッセージを発信する場に変えた。「環境は自動車メーカーが直面する課題。世界で6億人以上が観戦する媒体で、環境保護を訴えたい」(ホンダチームの和田康裕会長)

 対するトヨタはあくまで技術を重視する。F1を主催する国際自動車連盟はマシンにハイブリッドシステムの搭載を検討中で、「プリウス」などハイブリッド車開発で先行するトヨタは「リード役」を狙う。

 F1は急加速が必要で、「市販車のシステムと次元が異なるが、応用できる部分もある」とトヨタでモータースポーツを担当する山科忠常務役員。すでに本社の技術部門でレースに使える効率の高いハイブリッドシステムの開発を進めている。7月に北海道で「十勝24時間レース」に参戦する車に搭載し、実証試験を行う方針だ。

 ホンダも負けていない。昨年後半、本田技術研究所四輪開発センター(栃木県)でF1用のハイブリッド車の本格開発に着手した。和田氏は「速度だけでなく、環境技術も含めた最先端を追い求め、F1界をリードしたい」と対抗意識を燃やす。

 富士山のふもとの富士スピードウェイ(SW、静岡県小山町)。9月28〜30日の日本GP開催に向け、仮設スタンドやスポンサー企業向けの観覧施設の建設が急ピッチで進む。87年から20年連続で日本GPを開いてきたホンダ系の鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)の開催契約が昨年で切れるのを機に、両サーキットが地元自治体を巻き込んで誘致合戦を繰り広げた結果、富士に軍配が上がった。

 富士でのF1開催は30年ぶり。76年に国内初のF1が開かれたものの、翌年のレース中に立ち入り禁止エリアにいた観客ら2人をマシンがはねる死亡事故が発生。採算が合わなかったことや石油危機で「モータースポーツは資源の浪費」という批判もあったことなどから、それ以降中断した。

 転機は00年のトヨタの資本参加だ。豊富な資金力で、02年から約200億円をかけ、マシンがコースを外れても保護さくなどにぶつからないよう避難区域を拡大するなど改修。安全面を強化して開催地の座を射止めた。周辺3市町への経済効果は約13億4000万円と試算される。

 一方、鈴鹿側にも「日本のF1文化を築いてきたという自負がある」(鈴鹿市)。再誘致を視野に年内にも、ピットやコントロールタワーの建て替えを含む21年ぶりの大改修を行う計画だ。

asahi.com(2007-04-14)