雪不足・コメ減収、世紀末は6度も上昇…国連報告案

 地球温暖化についての科学的予測をまとめた国連「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の最新報告書案が23日、明らかになった。

 石油や石炭など化石燃料に依存する社会構造をこのまま続けると、日本を含む東アジア地域では、今世紀末の冬の平均気温が現在より最大6・95度、夏は5・48度上昇すると予測。国内では北海道以外のスキー場の大半が雪不足になるほか、中部以南の多くの県で米の収穫高が最大40%減収、花粉症患者も増加するなど、日常生活にも様々な被害が生じると警告している。

 今回の第4次報告書案は、第3次報告書の策定時点(2001年)では情報不足でできなかった、地域ごとの詳細な被害予測を具体的な数値をあげて初めて明記した。さらに、「気温上昇や雪氷の融解は現実に起きており、温暖化は明白」として、根強い温暖化懐疑論も明確に否定している。報告書案は、今月末から5月にかけて開かれるIPCCの各作業部会で正式決定され、世界全体の温暖化対策の判断材料となる。

 地域ごとの影響評価は、化石燃料に頼る社会を続けた場合と省エネ社会に転換したシナリオを設定。東アジアでは2070〜90年までの平均気温を予測した。その結果、経済や健康被害のほか、海面が1メートル上昇した場合は、約410万人が居住する東京や大阪、名古屋の沿岸域などが浸水する恐れがあるなどとした。

 世界的には、過去100年の平均気温が0・74度上昇した観測結果をあげ、第3次報告書時点の過去100年(0・6度)よりも温暖化が加速していると指摘。第3次報告書では今世紀末の平均気温は最大5・8度上昇すると予測していたが、今回は最大6・3度上昇すると上方修正した。

 その結果、北極海の海氷が晩夏には完全に消えるほか、暴風雨を伴う強力な台風やハリケーンも増加。海水の酸性化も進み、サンゴ礁が溶ける恐れがあると警告している。また気温が1990年時点より4〜5度上昇すると、世界で11〜32億人が水不足に、世界人口の5分の1が洪水被害に遭う恐れがあるとみている。

読売新聞(2007-01-23)