ホンダ、3Dにとどまらないバーチャルファクトリ戦略語る

 ホンダは2006年10月31日に開催された日本デルミア主催の「DELMIAアジア・パシフィックユーザーカンファレンス2006」の基調講演で、バーチャルファクトリにおける取り組み戦略を紹介した。

 同社四輪新機種センター完成車技術室の生産技術主幹である並木明氏が「Hondaにおける〈マルチディメンジョンものづくり〉の試み」と題して講演した。「DELMIA HUMAN」を使った製造部門における人間系シミュレーション技術を取り上げ、3次元データをいかに活用して開発期間短縮を実現するかについて触れた。

 同社は3次元(3D)データを使うだけでなく、時間の概念を加えた4D、さらに視覚や手、足の要素を考慮に入れた5D、個人ごとの差異までを検討する6Dといったマルチディメンジョンへの進化が必要とし、最終的にはバーチャルな世界でありながら限りなく現実に近いリアリティを持ち、感覚や勘に頼った作業までを可視可する7Dまで進化させる狙いを持っているとした。

 こうしたマルチディメンジョンの例として講演では動画を多用し、各段階でのヒューマンシミュレーションの例を示した。例えば、4Dは時間の概念を加えることで、動作の成立性、時間管理、手順の妥当性を判断できる。

 また、5Dでは視覚、手、足の位置を考慮することでいっそう作業の効率性を高められる。視野角を検証することでその作業における頭の位置が決まり、手の位置では上半身、そして足では下半身の位置が決まる。足の運びまでシミュレーションすることで同じ作業をする場合の効率を高めていくことが可能だ。こうして検討した項目はノウハウとして蓄え、海外工場などグローバルに作業を展開するのに役立てている。

 6Dでは体格の差や仕向け地の違いによってどのように作業が変わるかを検証する。右ハンドル車で検証した作業を左ハンドル車に展開する場合に、ミラー機能で左右対称の作業を編集したり、作業する高さによって体にどのような負荷が加わるかを確かめるといった例を紹介した。

 7Dについては現在さらに追求している段階で、見えない部分を半透明に表示することなどで感覚や勘に頼った作業を可視化したり、バーチャルと感じさせないような美しさの表現などに取り組んでいるとした。
<<林 達彦=日経Automotive Technology>>

techon.nikkeibp.co.jp(2006-10-31)