ホンダ、触媒でアンモニア発生しNOx浄化する新世代ディーゼル

 ホンダは2006年9月25日、開発中の新世代ディーゼルエンジンを公開した。このエンジンは、ガソリン車と同等のレベルに排ガスを浄化することを求める米国の排ガス規制「TierII Bin5」を達成(社内測定値)するのが最大の特徴。触媒内部でNH3(アンモニア)を生成し、このNH3による還元反応でNOX(窒素酸化物)をN2に変換する浄化システムを実現した。

 新開発の触媒は、排ガス中のNOXを吸着してNH3に転化する層と、触媒内で生成したNH3を吸着して排ガス中のNOXをN2に還元する層の2層構造を採用する。通常の空気過剰な燃焼状態では下層のNOX吸着層に排ガス中のNOxを吸着する。必要な時期になると燃料の比率を濃くし、NOX吸着層のNOXを排ガス中のH2と反応させてNH3に転化し、上層のNH3吸着層にNH3を一時的に吸着する。そして再び空気過剰の運転状態になると、上層に吸着されたNH3が排ガス中のNOXと反応してN2に還元される。

 新ディーゼルエンジンでは、エンジンの後の酸化触媒でCO/HC(一酸化炭素/炭化水素)を浄化、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)でPM(粒子状物質)を取り除いたのち、今回開発したNOX触媒によってNOXを還元する。

 今回開発した浄化技術の最大のポイントは、触媒の内部でNH3を生成することにある。これまでTierII Bin5規制をクリアする手段としては、尿素とSCR(選択還元触媒)を使う手法が有力と見られていた。これは排ガス中に尿素水を噴射、この尿素水が排気管中でNH3に変化し、このNH3によってNOXを還元する手法。

 すでにこの手法を、日産ディーゼルが大型トラックでは採用している。ただ尿素水の補給に手間がかかることや、尿素水を補給するインフラが限定されるという課題があり、乗用車に展開するのは難しいと見る向きもあった。

 この新技術を搭載するエンジンは、現在欧州向け「アコード」などに搭載されている排気量2.2Lのコモンレール直噴ディーゼルエンジン「i-CTDi」をベースとしたもので、ベースエンジンに対して燃焼室形状の最適化、噴射圧200MPa(2000気圧)のコモンレールシステムの採用、EGR(排ガス再循環)の改良などで、エンジン自体が発生するNOXやPMの排出量を減らしつつ、出力も向上させているという。ホンダはこの新世代ディーゼルエンジンの販売を、2009年までに米国で始める計画だ。 <<林 達彦=日経Automotive Technology>>

《追記》
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techon.nikkeibp.co.jp(2006-09-25)