GM会長、提携で迫る「退任」
決裂なら株急落リスク


 米ゼネラル・モーターズ(GM)の取締役会は7日、仏ルノー・日産自動車との予備的な提携協議を、リチャード・ワゴナー会長の主導で始めることを承認した。自主再建を貫きたいが、大株主の提案をむげには拒否できないワゴナー会長は、苦しい立場だ。協議が収穫なしで決裂すれば株価が急落するリスクがある一方、本格提携に踏み切れば自らの退任につながりかねない。

 7日の取締役会の焦点は、提携協議でGM側の主導権をだれが握るかだった。GM株の約10%を握る投資会社トラシンダは、ルノー・日産両社の社長を兼ねるカルロス・ゴーン氏に周到な働きかけをしたうえで提案しただけに、ワゴナー会長が協議入りを拒否するのはそもそも不可能だった。

 「ポーカー第1ラウンドは、ワゴナー会長に軍配」。米自動車専門誌オートモーティブ・ニューズは、トラシンダを率いる「カジノ王」カーク・カーコリアン氏との対決結果を、そんな表現で伝えた。

 ワゴナー会長が、自ら提携協議の主導権を握ることで合意を取り付けたからだ。ただし、取締役会に綿密に報告することが条件。社外取締役主導となる委員会の設置は避けることに成功した。

 会長は声明で「心を開いて協議入りし、相互にどのような恩恵があり得るのか考えを聞きたい」と強調。14日にはゴーン氏と会談する見通しだ。

 ただ、協議はあくまで「予備的」との位置づけで、実際は利害調整が複雑になると予想される。このため会長は「いかなる結論が出るにしても、利点を注意深く検討すべきだ」として、性急な結論には慎重だった。

 これに対してトラシンダは「(提携の)全面的、客観的な評価をするには委員会設置が不可欠だ」と不満を表明。独立の委員会が、外部コンサルタントに助言を受けながら提携協議を監視する方式を主張した。

 GMには、全米自動車労組(UAW)との労使協定による雇用維持など、古き「日本式経営」ともいえる高コスト構造が残る。そんなしがらみの中で、ワゴナー会長は08年までに北米9工場を閉鎖するなど、リストラ策を打ち出してきた。今年初めに18ドル台まで落ち込んだ株価が、5月下旬に29ドル台まで回復したこともあって、自主再建に強いこだわりがある。

 だがトラシンダは05年に株式の一部を1株31ドルで取得しているだけに、我慢は限界。6月に再び下落した株価は、提携提案で持ち直したが、なお29ドル台にとどまる。

asahi.com(2006-07-09)