米国のSUV人気と日本の軽自動車人気

 「あっ、黒いLexus RX(日本名ハリアー)を女性が運転している」、これがニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港に到着して、市内のホテルに行く途中に最初に注目したクルマでした。実は、その後2日間にわたりニューヨーク・モーターショー(2006 New York International Auto Show、一般公開日:2006年4月14〜23日)を取材したのですが、この印象通りショーの主役はSUVでした。

 初日にはホンダのAcura「RDX、MDX」、米GM社のSaturn「Outlook」、2日目にはマツダの「CX-9」、ホンダの「Element SC」、スズキの「XL7」、三菱自動車の「Outlander」と、LexusやInfinitiなどのスペシリティカーを除けば、目新しいほとんどの新車がSUVだったのです。  滞在したホテルからショー会場には歩いて10分程度なのですが、この毎日の通勤路で見かけるクルマもSUVもしくはセダンという具合でした。逆に日本で人気のあるミニバンを個人ユーザーが乗っている姿はあまり見かけません。米国ではミニバンは走りが悪く、格好も今ひとつという印象が定着しているようです。

 このため、日本の完成車メーカーも新型車をミニバンからSUVにシフトさせています。この顕著な例であるマツダによれば、「ミニバン市場の成長は止まりつつあるが、SUVはまだ成長している。ユーザーはミニバンではないSUVの3列シート車を求めている」といいます。具体的には国内でミニバンとして発売している「MPV」のプラットフォームを利用して、CX-9を米国専用のSUVとして2007年初頭に投入、それに先がけベースはやや異なるものの5人乗りSUV「CX-7」も5月に投入予定です。ホンダのMDXなども乗用車系プラットフォームを使ってSUVに仕立てているようです。

 さて、SUVのユーザーですが、冒頭の目撃シーンでもそうであったように、半分以上が女性ユーザーといいます。男性は普段通勤などでセダンに乗り、奥さんが子供の送迎を含めてSUVに乗るというのが典型的な使用シーン。これまでは大型SUVに乗っていたけれど、ガソリン価格の高騰でダウンサイジングが進み、小型および中型のSUV、要するにトヨタの「RAV4」や日産の「ムラーノ」に切り替えるという動きが加速しています。実際、この小型および中型のSUVは相変わらず好調です。先日、日本国内でRAV4の輸出用部品を作っているメーカーを訪ねましたが、月産2万5000台以上、つまり年間で30万台以上の規模で生産を行っていると聞きました。

 ここまできて女性というキーワードで思い出したのが、日本での軽人気です。日本では男性がミニバン、女性が軽を選ぶケースが多いと思いますが、米国ではこの軽の代わりがSUVといえるかもしれません(もちろん通常の小型車もあるでしょうが)。日米では道路サイズやガソリン価格も異なり、選ぶクルマの傾向は大きく違うのですが、「女性に人気のあるクルマはヒットする」という点では共通しているといえそうです。

林 達彦=日経Automotive Technology(2006-04-18)