今年のF1は「激戦」の可能性大!

 1月、2月と2度のテスト取材に行って、一応ウォームアップしたつもりだったのに、いざ開幕となるとチョッピリ重いこの気分。えっ? 待望のシーズン開幕に「心躍る気分」じゃないのかって? いや、もちろんシーズンがスタートするのは楽しみなのだが、これから10月末まで毎月のように飛行機に乗りまくり、文字通り、旅から旅の生活が続くと思うと…ね。それが仕事とはいえ、決して若くないだけに、少々「ドヨーン」とした気持ちにもなるわけです。

 しかも、今年は開幕戦が中東のバーレーン。なぜ、例年のように開幕がメルボルンではないかというと、今年は旧英国統治下にあった国が参加する「大英帝国圏のオリンピック」とも言うべき、“コモンウェルス・ゲームス”(そんなものがあるって知ってました?)が3月にオーストラリアで開催されるからで、F1の方はそれを避けての変則カレンダーとなっているのだが、そのバーレーンが筆者は正直、ちょっと苦手。暑いし、砂漠ばっかりだし、F1開催期間中はホテルのボッタクリが超悪質だし…。というわけで、例年にもまして開幕戦に向う気持ちを更に重くさせてしまうのだ。

 とはいえ、グチってばかりもいられないので、いよいよ始まる今シーズンの展望を少々。オフシーズンのテストを見る限り、今年のF1は「激戦」の可能性大! 去年はルノーとマクラーレンの一騎打ちといった感じだったが、今年はうまく行けば上位4〜5チームに優勝のチャンスがある大混戦が期待できそうな気がする。チャンピオン候補の筆頭はやはり、昨年、念願のダブルタイトルを獲得したルノー。新しいV8エンジン、空力に優れた車体ともに仕上がりはトップクラスでテストでもコンスタントにトップタイムをマーク。タイトル防衛を目差すフェルナンド・アロンソはもちろん、今年はベテランのフィジケラもヤル気満々。速さと信頼性を高い次元でバランスさせたマシンとドライバーラインアップ、そしてチームの経験を考えると、今年もルノーがタイトル争いをリードすることは間違いないだろう。

 一方、冬のテストでそのルノーに迫る速さを見せていたのがホンダだ。去年はシーズン序盤の出遅れを最後まで取り戻せずに、周囲の期待を裏切ってしまったBARホンダだったが、チームの株式をホンダが100%取得して1968年以来、実に38年ぶりで「ワークスホンダ」として戦う今シーズンは絶好調。特に新開発の2・4リッターV8エンジンの仕上がりはトップクラスで、久々に「強いホンダが帰ってきた」という印象。ルノーにとって最大のライバルとなるはずだったマクラーレンが、新エンジンの開発に苦戦してやや出遅れているだけに、序盤はルノー&ホンダが2強を構成し、その後ろにフェラーリ、マクラーレン、トヨタ、更にはウイリアムズあたりがひしめく展開か? また、昨年までのフェラーリに加えて今年からトヨタ、ウイリアムズもブリヂストンタイヤを使用することになったため、こうした混戦状態が実現するかどうかは、ブリヂストンとミシュランのタイヤ戦争がどれだけ拮抗した戦いになるかに掛かっていそうだ。

 えっ? 佐藤琢磨、井出有治の日本人コンビを擁する新チーム、スーパーアグリF1はどうかって? うーん、正直に言って、開幕から数戦は「ちゃんと走れば上出来」というレベルだと思って、ある程度覚悟しておいたほうがいいかもしれない。最下位グループの常連となる可能性が大きいことはもちろん、チーム全体の経験不足から思わぬトラブルに直面することもあるのでは…。ともかく、アグリジャパンに関しては、「暖かい目」で、しかも「長い目」で見守り、応援していくことが大切だろう。

 ちなみに、開幕前にチェックしておきたい今シーズンのF1の大きな変更点は(1)エンジンが従来の3リッターV10から2・4リッターV8となった。(2)レース中のタイヤ交換が再び可能になった。(3)予選が1台づつタイムアタックする従来の方法ではなく、15分の予選セッションを2度行い、それぞれ下位6台のマシンが脱落、最後に残った10台が20分の最終セッションで上位10グリッドを争う通称「ノックアウト方式」へと変更されたこと…の3つ! こうした新しいレギュレーションが今年のタイトル争いにどんな影響を与えるのかにも注目したい。 <<川喜田 研(かわきた・けん)>>

nikkansports.com(2006-03-09)