トヨタとホンダが米国勢圧倒
米ハリケーン寄付額に好業績反映

 ハリケーン「カトリーナ」が米国南部を直撃してから、およそ1カ月。過去最大級の自然災害には企業から多額の寄付が集まった。各社の支援内容が出揃ったところで、日経ビジネスでは主要企業の寄付金額を比較してみた。その結果、日本勢では、自動車メーカーの存在感が際立った。

 トヨタ自動車は、南部に拠点を持つディーラーなどとともに合計500万ドル(約5億5000万円)の義援金を赤十字などを通じて被災地に送った。ホンダも同じく500万ドルの義援金のほか、船外機や発電機などを寄付した。

 一方、ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、ダイムラー・クライスラーの米国勢は、義援金が100万ドル強の規模。米国勢の場合、中古車の提供など支援内容が多岐に及ぶため、厳密な比較は難しいが、少なくとも義援金ではトヨタ、ホンダが大きく上回った。最近の業績の差が金額に、はっきりと表れた格好だ。

 大統領の視察より早く表明
 トヨタとホンダを超えるのは、全体でもウォルマート・ストアーズ(寄付額1700万ドル)、エクソンモービル(同700万ドル強)、ゼネラル・エレクトリック(GE、同600万ドル)など5社。GMの経営難が注目を集める中で日本の両社が多額の寄付を決めた背景には、米国への貢献をアピールし、摩擦を未然に防ごうとする狙いがある。

 金額だけではない。トヨタが寄付を表明したのは9月1日。直撃の3日後で、ブッシュ大統領の現地入りよりも1日早かった。「過去の教訓から、あまり時間をかけ過ぎて後手に回るのはよくないと判断した」(北米トヨタの幹部)。同社は過去の自然災害では、他社の動向や被災地における事業展開などを調べたうえで慎重に寄付額を決めていた。今回は一転、北米拠点のトップが協議し、早々に金額を決めた。

 ホンダも、スマトラ沖地震の支援活動では、従業員から「対応が遅い」と批判の声が上がっていた。そこで今回は9月2日には寄付を表明した。

 日産は政治と一線画す
 これに対して、日産自動車は義援金が約100万ドル。このほか、小型トラックとSUV(スポーツ多目的車)の計50台を災害復旧用にほぼ無償で工場のあるミシシッピ州に貸し出した。米国勢と肩を並べる規模だが、トヨタ、ホンダと比べると、見劣りする。

 カルロス・ゴーン社長兼CEO(最高経営責任者)がトップに就いて以来、日産はワシントンにおけるロビー活動を縮小するなど、ビジネス専念の姿勢を鮮明にしていた。今回もトヨタ、ホンダの「寄付競争」からは距離を置いているように見える。

 自動車以外では、キヤノン、東芝、日立製作所、ブリヂストン、松下電器産業などが100万ドル規模の寄付を実施した。ソニーは赤十字に寄付を実施済みだが、金額は公表していない。

 海外企業に目を向けると石油、小売り、製薬、食品、放送、IT(情報技術)関連が目立つ。今回のような大規模な自然災害では、消費者を相手にするグローバル企業は、100万ドル以上の寄付が1つの目安と言えそうだ。

 とりわけ今回、存在感を示したのが世界最大の小売業ウォルマート。南部アーカンソー州に本社を構える同社はハリケーン通過直後、全米店舗の約3%に当たる120店余りが一時閉鎖に追い込まれた。その後、計1700万ドルの義援金の拠出を表明。また、被災地にテントやトラックの荷台を活用した小型店舗を開き、飲料水、衣服、食品、おむつなどを無料で提供した。

 ここ数年、同社は低賃金労働や性差別を訴える労務訴訟が頻発し、世間の批判にさらされていた。だが、今回は一転して、称賛の声が上がっている。米国では、後手に回ったブッシュ政権の対応とウォルマートの迅速な対応を比較する論調が目を引く。被災者の多くが低所得者層で、社会問題にも発展した今回の自然災害は、企業の社会貢献に対する姿勢も浮き彫りにした。(ニューヨーク支局 山川 龍雄)

日経BP(2005-09-30)