【新入社員へのことば】
競争激化する自動車業界,
チャレンジ精神で生き残れ

 一部を除いて好業績の自動車業界だが,韓国メーカーの台頭などによる競争の激化を意識してか,入社式でのトップの訓示では,危機感を持つと同時に,変革とスピードアップに向けた新人のチャレンジ精神に期待する話が目立った。加えて品質要求の厳しさを反映するかのように顧客視点を強調するトップも多かった。

 厳しい環境だからこそチャンスもある
 「かつて経験したことがないほど激しい競争の中にいる」??2004年度に過去最高の販売台数751万台を達成し,国内シェアも44%以上と絶好調のトヨタ自動車だが,同社取締役社長である張富士男氏は,1700人の新入社員に向けて危機感を持つよう訴えた。その上で,「トヨタウェイ」のポイントとして「お客様のことを念頭において,仕事を進めてほしい」「チャレンジ精神を持って,自分を成長させてほしい」という2点を強調。厳しい競争の中だからこそ,果敢なチャレンジが成功につながる可能性があると新人を鼓舞した。

 ホンダは,2004年度の808人に引き続き,2005年度も850人余りの新卒を採用した。同社取締役社長の福井威夫氏も,やはり「熾烈で世界的な生き残り競争の真っただ中にいる」と競争の激化を強調する。ただし,その中でも「お客様の期待に応え続けることで生き残り競争に打ち勝てる」と顧客重視に道があると説いた。さらに「失敗を恐れず伸び伸びと活躍してほしい」とホンダイズムものぞかせた。

 変化に対応し学び続ける
 日産自動車CEOのCarlos Ghosn氏は,企業や社会に対して「価値ある貢献をするために常に学び続けなければならない」と,激しく変化する環境下で常に成長するよう期待をこめた。そのためには「学習しそれを業績として認められるような努力が必要」。さらに新しくスタートする事業計画「日産バリューアップ」にも触れ,「わくわくすることが始まる時期に入社した」新人に対し,「仕事は簡単ではないが,意欲的で能力があれば存在を示すことができる」と厳しいながらも力を発揮できる場所であることを強調した。

 上記の3社が例年通りの採用数なのに対し,2004年度(433人)の倍以上の882人と,大幅に採用を増やしているのがマツダ。同社代表取締役社長の井巻久一氏が強調するのは「One Mazda」と「変革」だ。One Mazdaは,短期的,近視眼的な視点にとらわれず「みんなで心を一つにして」開発から販売まで全体を見通そうというもの。「全員が長期ビジョンに向けて「城」を作っているという意識をもって協働する時にマツダは強くなれる」と協調の重要さを説く。さらに「現状に満足することなく,常に向上を目指す姿勢」を保ちながら「意味あるものは強化し,そうでないものは取り除かなければならない」と変革に向けてチャレンジするようにと語った。

 誠実さを武器に
 「誠実さは,これからの企業が生き残るための競争力になる」??リコール問題で業績低迷にあえぐ三菱自動車。代表取締役社長である益子修氏は,顧客からの信頼こそが大切だと強調した。益子氏は「大切なものは何か」を問いかけた上で「絶えず顧客が何を考え何を望んでいるのかを考えることを身につけてほしい」と顧客を重視すべきと語った。さらに,企業コンプライアンスが重要だとして「おかしいことはおかしいと言う勇気を持ち続けてほしい」と締めくくった。 <<吉田 勝>>

日経ものづくり(2005-04-01)