上海F1グランプリの経済効果は?

 9月24日から26日まで上海で初めてF1グランプリが開催された。モータースポーツの最高峰の同グランプリが開催されることで、世界に向けて中国の経済発展や国際的イベントの開催能力が発進されたわけだ。その意義は今後の北京五輪が近づくにつれて明らかになることが予想される。ここでは単純にF1中国グランプリの経済効果を検証してみる。

 まずは支出面からみてみる。中国メディアのまとめによると、レース関連の事業を一手に担う上海賽事商務有限公司が中心となり、上海サーキット(上海北西郊外の嘉定区に位置)の建設に26億元(1元=約13円)を投じた。次に、FIA(国際自動車連盟)への手付金である開催登録金が3億元に上った。

 また、サーキットまでのインフラを整えるため、17.4キロメートルの公里嘉金高速公路のほか、関連道路の建設費は少なくとも7億元と想定される。上海賽事商務はこのほか、中華圏でのF1関連のライセンス代理権も100万ドル近くで手に入れた。これらを合計すると、上海は民間も含めて約36億元に上る大金をF1中国グランプリに投資したことになる。

 一方の収入だが、まずは入場券販売が2億4300万元となっており、これにテレビコマーシャル放送権、サーキット周辺の駐車場料金を合わせた約3億元が上海賽事商務の取り分となっている。

 しかし、F1グランプリの開催都市である上海市はさまざまな産業でこれを上回る収入をあげた。

 まずはホテル産業。グランプリ開催中のホテル料金は軒並み高くなるのが世界どこの都市でも当然のこととなっているが、上海でも通常時の30〜50%高となった。2003年に5つ星クラスのホテルが料金上での「同盟」を結成し、グランプリ開催期間中の宿泊料金は300ドルを下回らないように決定されたことも値上げを後押しした。上海浦東淳大万麗酒店は通常1000元のところを2600元に、金茂君悦大酒店は同2100元を2950元にまで値上げした。JW万豪酒店では1泊300ドルのところを500ドルまで大幅に上げた。

 しかし、それでもホテル稼働率は通常時の20%増しで、5つ星ホテルの多くでは100%に達した。中級ホテルでも通常時の4〜5倍に値上げし、内外の客を迎え入れた。結果、開催期間3日間のホテル業界の収入は2億1000万元に上ったとされる。

 会場へは3日間で延べ15万人の観客が訪れたが、サーキットまでの交通料金が1日当たり60元とすると、上海の交通部門への貢献額は1200万元超に上る。また、1人当たりの食費を1日100元として計算すると、2924万元の収入となった。

 これに比べて段違いの儲けをみせたのは地価の高騰だ。嘉定区の上海サーキットがある地区の地価は1平方メートル当たり7000元と、同区の中心部の5000元を40%も上回る現象が出た。サーキット周辺20平方キロメートルの地価が平均的に上昇したと見積もられ、上海市には64億元分の土地の価値増大がもたらされた。

 すべてを合計すると、F1開催による収入は少なくみても66億〜68億元となり、支出の24億元を大きく上回った。11年はかかるとされていた投資回収が、わずか1年で達成された格好だ。

 しかし、これ以外の無形収入の重要性を指摘する声も上がっている。F1は世界で毎年延べ550億人がテレビで観戦する超人気スポーツイベント。これに「上」の字の形をした上海サーキットが映し出されるだけでも、国際社会に向けて上海の地位や成長振りをアピールすることができる。また、2010年の万国博覧会に向けた国際イベントの開催実績および能力を内外に示すことでも、上海市はF1をうまく利用したとも言えるだろう。(チャイナサーベイ)

日経BP社 情報(2004-11-02)