ブッシュはなぜ戦争を始めたのか

 『ブッシュは、なぜ戦争を始めたのか』 少々興味のある内容です。
 こんな見方もあるんだ、と思いました。 イラクは中々落ちつきません。 このまま”すんなり”とも思われません。 日本では一人の命でも大騒ぎに なるのに引き換え、アメリカは既に膨大な命を失っています。 これだけの 犠牲を払って、またベトナムの二の舞との懸念もささやかれる中で、我が 総理大臣は早々と多国籍軍に加わるとの意思表示をしてしまいました。
 国連の決議がないまま、自衛隊は派遣し、当然、アメリカと「政治決着」のはずの ジェンキンスさんのことは解決出来ずに、ただただ、あきれるばかり。
 北朝鮮でも然り、言わなくてもいいことを言って、被害者の家族が怒るの も当然です。
 諸悪の根源はマスコミと結託した?「世論調査」「内閣支持率」なるもの ではないでしょうか? 皆さん、どう思いますか?


      ブッシュはなぜ戦争を始めたのか

 第二次世界大戦が終わった時、アメリカは世界最大の債権国であり、アメリカの財務省は、世界中の金の60%を保有していた。アメリカは、国内に豊富な戦争資金があった冷戦時代の前半、現在のように、自国の経済成長のために同盟国の金を使って戦争をするというよりも、むしろ同盟国の経済成長のために自国の金を使って戦争をしていたように思える。例えば、朝鮮戦争は日本に特需景気をもたらし、ベトナム戦争は韓国に特需景気をもたらした。当時のアメリカは、日本や韓国にとって、成長のための栄養を与え、また外敵から自分たちを守ってくれる存在だった。

 ところが、レーガンの時代以降、双子の赤字(財政赤字と経常赤字)が増大すると、アメリカの戦争の方法が変化する。戦争の本質がリフレーションであることには変わりないが、アメリカは、もはや戦争資金を国内だけでは調達することができなくなったため、同盟国に「国際貢献」、すなわち戦争資金の献上を要求するようになった。湾岸戦争はその代表的な例である。

 1987年10月19日の月曜日、ニューヨーク株式市場の株価が22.6%下落するブラック・マンデーが起きた。日銀が低金利政策を長期にわたって継続したおかげで、アメリカは恐慌に陥らずにすんだのだが、このアメリカ救済策は日本にバブル経済という副作用をもたらした。これも、1990年に崩壊すると、世界的なデフレ懸念が生じ、このため、ブッシュ・シニア元大統領は、イラクとの戦争によって、デフレの危機を克服しようとした。

 もともとアメリカは、イラン・イラク戦争でイラク側を支援していた。アメリカは、日本やヨーロッパに圧力をかけてイラクの石油を買わせ、そしてイラクは石油を売った金でアメリカから武器を買った。1988年にイラン・イラク戦争が終わると、アメリカは、大量の武器を持ったイラクとの戦争を計画し始めた。時あたかも、ブラック・マンデー後の、戦争の必要性が出てきた頃である。計画は、89年に戦争計画1002-90としてまとめられ、翌年にはコンピュータによる図上演習が行われた。

 もっとも、長年の戦争に疲弊していたイラクには、新たに戦争を始める意欲がなかったので、アメリカは、イラクに対する最大の債権国である隣国クエートに、イラクを挑発させることにした。すなわち、クエートは、OPECの割当量以上に石油を生産し、石油価格を下落させ、石油の売却益で債務を返済しようとしていたイラクの計画を挫折させ、それでいて、債務免除には一切応じずに、即刻返済を迫った。さらにクエートは、アメリカから供与された傾斜穿孔技術により、イラク領内に位置するルメイラ油田から石油を盗掘していた。激怒したサダム・フセインは、1990年8月、クエートに侵攻した<*>。

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記:木田橋 義之(2004-06-17)