植林
===水源の森は生態系の源でも有った===

 秋深まった11月の第2日曜日、紅葉真最中の群馬は水上利根川上流藤原ダム上奈良俣に出かけた。この時期の天候は変わりやすい、昨日の晴れが一変気温8℃と寒くしかも小雨だ。早朝6時半HM狭山を出発する、奈良俣植林への参加者には懐かしい顔がいっぱいだ、ひとしきり挨拶後30分位で皆眠りこける。3時間弱で現地に到着、途中の紅葉は小雨に霞みながらも尾根全体を赤や黄色に染めていた。

 雨も上がった10時頃から植林の開始、150人位のメンバーが勢揃い7班に分かれて植林する。植林種はブナ1000本を主に家庭メンバーの方の寄贈苗も加え1,300本位、 場所は藤原ダム建設時の残土を上流峡谷に埋めた所で大変広く数十万坪有りそうだ。 植林の現場は一寸段々になっており傾斜は30度位ある、ここに穴を掘るが残土と多量の石ころがMIXしており鍬での作業は石ころに跳ね返されたりする。何とか30cmくらいの穴にして40cm位のブナを植え根に充分な土をかけて次に苗木上下左右に振り馴染ませ更に土をかけて足で踏み固める、その上に周辺の落葉腐葉土をかけまた踏み固めて一本完了だ。

 2時間弱で全部植林完了。傾斜の厳しい場所の穴掘り時足を踏ん張って作業するので終了した時のアンダーウエアーは汗でびっしょりだった。ちなみに足を守る靴は踏ん張りの利く山用の靴がベストです。

 いい汗をかいた後の昼飯のうまいこと! 空は曇っていても周りの山々の紅葉終盤の景色の美しさは格別だ! 懐かしい仲間との会話も楽しい。

 午後はこの峡谷の上部で植生の実学習をする、元の谷と埋め立てた所の境の部分で自然成り行き植生と埋め立て当時植えた榛の木の人工林を観察その差を学習した。 榛の木は10年超で虫に食われたり腐ったりするので次世代の林造りのためと言う植林活動の大切さを理解する事が出来ました。
 自然林の方は種々雑多な植生で、ホウの木、モミジ、ヒノキ、ブナや自分では名前のわからない木がとにかくいっぱい峡谷の傾斜部に生えていた、その中でブナの大木の下に落下した種から育った千本位と覚しき40cm程の幼木が成長していたが、そのままでは相互淘汰され成木になれるのは数本とのこと、厳しい自然の掟だ。ただこの豊かな林は雑多な種、実を創り出しており自分の種の保存はもとより、大量の葉を落下させ豊かな腐葉土壌も創り出している。この腐葉土の中には分解を促進するミミズがかなり住んでいた。

 自然林では種が落ちて再生するものと実として野生のネズミ、ウサギ、リス等小動物の餌になる役割がある。小動物が生息するとその食性上位のフクロウや鷹などの猛禽類も住め、また豊かな実は小鳥達の餌はもとより狸や熊も住める豊かな森だ。その証拠に太さ15cm くらいの榛の木の幹には熊があの鋭い爪で引掻いた跡が無数に残されていて少し緊張したがこんな現実の生態系が見られるなんて何と幸せな事か。

 奈良俣の林は昨日の雨のせいもあるが一面の落葉が柔らかく保水、余ったものは一寸低い方へと垂れて流れていく。表面を流れる水もあれば、地中に沁みこみ湧き出して流れ出す水もあるだろう、まさに水の出発点、水源の森を実感した。ここを出発した水は、水源――ダム――利根川――河口――海 と流れて行く。各々の過程では人の関わり合いが多くなるにつれ水はその純粋さを変えていくが、命の源であることはゆるぎないと思う。

 水はその各段階で・川は豊かな農産物、美味しい魚・河口では豊かな魚貝類・海では海草や魚類を育み各々の豊かさを創り出している。その原点は源の水に有ることを植林を通じて深く認識する事が出来たと思います。

 大量の水も水源の一滴と豊かな自然の緑が生み出すもの、それを支えるのは皆の植林パワーである事を思い知らされた植林活動でありました、また参画したいと思います。

記:貝吹 繁雄(2003-12-1)