ホンダ、研究所を大幅縮小 四輪の開発機能を本社に統合

 ホンダは四輪事業の開発体制を4月に大幅に見直す。研究開発子会社の本田技術研究所(埼玉県和光市)が持つ四輪車の商品開発機能をホンダ本体に統合する。迅速で効率的な開発体制をつくるのが狙い。創業者の故・本田宗一郎氏の社長時代に設立され、60年近い歴史を持つ研究所は大幅に縮小される。自動車メーカーでは珍しく、商品や技術の開発を担う研究所を本社と分けてきたホンダにとって大きな転機となる。

 研究所の中で四輪の商品開発を担う「オートモービルセンター」(和光市、栃木県芳賀町)の商品開発機能を本体に移す。昨年4月には研究所の二輪事業の開発部門を本体に統合した。二輪車の商品開発が順調に進んでおり、四輪でも同様の組織再編に踏み切る。研究所に属する1万人超の多くが四輪車の商品開発にかかわっており、大がかりな組織再編となる。研究所は今後、先端技術の研究に取り組む「先進技術研究所」(和光市)などの機能に絞り込み、将来の商品開発の「種」となる技術の蓄積に専念する。近く発表する。

 ホンダでは、本体が研究所に新型車両の設計などを委託し、最近は研究開発費の大半を委託費として研究所に支払ってきた。四輪事業の営業利益率が2018年度に1・9%と低迷する一方、売上高に占める研究開発費の割合は5%前後とトヨタ自動車などに比べて高い。商品開発と部品の購入や生産を分けている現行の開発体制はムダが多く、非効率だとの声が社内で出ていた。研究所の関係者は「商品開発と本体の各部門が別会社だとスムーズに仕事が進まないことが多々あった」と話す。

 ホンダは故・本田宗一郎氏が1946年に「本田技術研究所」を創業したのが始まり。48年に「本田技研工業」となり、60年に本体から分離・独立する形で改めて「本田技術研究所」を設立した。経営と研究開発を分離し、技術者が利益の追求にとらわれすぎずに研究に打ち込める体制は、ホンダの独創的な製品開発を支える「強み」の源泉とされてきた。技術屋の集団である研究所の権限は強く、現在の八郷隆弘社長を除いて、ホンダの歴代の経営トップはすべて研究所のトップの経験者だ。組織再編によってホンダの強みを損なうことなく、開発効率を高められるかが今後の課題となる。(森田岳穂、久保智)

asahi.com(2020-02-17)