ホンダの定額制モビリティーサービス、中古車に限定した理由

 ホンダは2020年1月28日、定額制のモビリティーサービスを開始した。同社の軽自動車と小型車の5車種を、最短で1カ月から利用できるのが特徴である。新型車は利用できず、中古車を対象にした。

 利用期間は最短1カ月から最長11カ月まで、1カ月単位で選べる。月単位で利用できるモビリティーサービスは日本で初めてという。今回の定額制サービスを通じて同社は、「クルマは所有していないが、短期間であれば利用したい」といったユーザーを開拓する。中古車在庫の有効活用や中古車販売の増加も狙う。

 定額制のモビリティーサービスでは既に、トヨタ自動車が「KINTO(キント)」を手掛けている。新車を対象にサービスを始めたが、現在は中古車も利用できるようになっている。これに対してホンダは中古車に限定し、新型車は扱わないことにした。

 通常、新型車の車両残価(下取り価格など)は登録から約1年を過ぎると大きく下がり、その後、下落幅は緩やかになる。同社日本本部営業企画部部長の高見聡氏は、「いわゆる“1年落ち”以降の中古車であれば、新型車よりも利用料を安く抑えられる」という(図1)。新型車の利用料を下げるには、利用期間を長くする必要があり、利便性が悪くなる。こうした理由から、利用できる車両を中古車に限定した。


 新サービス「Honda Monthly Owner(ホンダ マンスリーオーナー)」で利用できる車種は、軽自動車「N-BOX」と同車の福祉車両の他、小型車「フィット」と小型ミニバン「フリード」、小型SUV(多目的スポーツ車)「ヴェゼル」のハイブリッド車(HEV)の5車種。2014年式から19年式までの車両を用意した。ホンダの先進運転支援システム(ADAS)「Honda SENSING」搭載車も含まれる。2020年4月には、軽スポーツ車「S660」を追加する。

 月額利用料(消費税込み)は、2万9800円(N-BOX)から5万9800円(フリードとヴェゼルのHonda SENSING搭載車)まで。同料金には税金や保険料、メンテナンス料などが含まれるが、駐車場代と燃料代は利用者の負担になる(図2)。


トヨタのキントの場合、利用期間は原則的に3年だが、新型車が3万円台の月額料金で使える。IDOM(旧ガリバーインターナショナル)の定額制サービス「Norel(ノレル)」は各社の新型車と中古車を利用できるが、月額利用料は中古車が5万円台から、新型車が7万円台から、利用期間は最短で90日となっている。ホンダが今回の新サービスを軌道に乗せるには、こうした競合サービスとの違いを利用者にいかに訴求できるかがカギになる。

 新サービスはまず、埼玉県内のホンダの認定中古車販売店「ユーセレクト城北」(和光市)で1月28日に始めた。同販売店が保有する中古車在庫のうち13台を、新サービス用に使う。初年度に約50台の利用を見込む。同販売店での半年間の利用状況を見て、利用車種の拡大や他地域への展開を検討する(図3)。


 利用までの手続きを簡素化した。具体的には、パソコンやスマートフォンを使って専用のWebサイトにアクセスして利用したい車種を選び、ユーザー情報を入力して会員登録を行う。会員登録が終わると利用希望日(車両受け取り日)を入力して予約を行い、クレジットカード決済で月額利用料を支払う。

 利用料の決済が終わると、販売店から関連書類が郵送されてくる。この書類に必要項目を記入して返送。車両の受け取り日に販売店に行くと、その日からサービスを利用できる。定額で利用できるのは、1カ月の走行距離が1000kmまで。これを超えると、1kmあたり6円の追加料金が発生する。

 なお、ホンダによると、2030年に向けて日本の新車販売市場は減少するが、シェアリングサービス市場は年率10〜20%の成長が期待できるという(図4)。「所有から利用」へという消費者ニーズの変化に対応するため同社は、今回の新サービスを提供することにした。「現在の所有と利用の形態では対応できない消費者のニーズに対応していく」(高見氏)という。


高田 隆=日経クロステック/日経Automotive

《追記》
☆本田技研工業情報 「最短1カ月から利用できる新たな月極定額モビリティサービス「Honda Monthly Owner(ホンダ マンスリー オーナー)」を中古車で開始」ここをクリック

nikkeibp.co.jp(2020-01-29)