GMが大リストラ、トランプ氏は猛反発 大型車に集中へ

 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)が北米5工場の生産の停止と、1万4千人以上の人員削減に乗り出す。米金融危機後に経営破綻(はたん)し、大規模な工場閉鎖に追い込まれて以来の大リストラだ。米市場で人気の大型車に集中してもうけを確保し、自動運転車などの次世代技術につぎ込む戦略だ。ただ、米トランプ政権や労組は猛反発しており、曲折もありそうだ。

GMが1.4万人削減へ 5工場停止し次世代技術に集中

 GMは26日、米国とカナダに計18ある車両工場のうち3工場と、米国の二つの部品工場について、2019年にも生産をやめる方針を発表した。北米以外の2工場も操業を停止する。昨年末時点で世界に約18万人の雇用を抱えるが、人員削減は開発・管理部門にも及び、管理職は25%減らす。

 足元の経営が苦しいわけではない。米国市場ではスポーツ用多目的車(SUV)など利幅が大きくGMが得意とする大型車の人気が続き、毎年100億ドル(約1・1兆円)規模の営業利益をかせいでいる。

 ただ、セダンなどの乗用車は販売が落ち込む一方だ。今回、生産停止とする工場は、セダンを主に組み立てている。GMは「シボレー・インパラ」など主なセダンの生産を19年で終える計画だ。ライバルの米フォード・モーターや欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は、米セダン市場からほぼ撤退する計画を発表済みだ。

 米新車市場は16年をピークに頭打ちとなっており、今後の販売減にも備える必要がある。貿易摩擦のあおりを受け、米国内の生産コストも上がっており、中国市場の減速も不安要素だ。

 GMのメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は「自動車産業は急速に変化している。会社と経済が力強い今のうちに行動するのが適切だ」と理解を求めた。今回のリストラにより、20年までに現金収支が計60億ドル(約6800億円)規模で改善する見込みだという。

  浮いた資金を自動運転車や電気自動車(EV)などの開発に回す。GMは今年、自動運転をめぐりソフトバンクグループやホンダと相次ぎ提携し、傘下企業への出資を受け入れた。自動運転開発では米グーグル系ウェイモと並んで先頭集団にあるとみられている。資金や人手をさらに潤沢に投入し、「自動運転タクシー」などの早期の普及をめざす。市場は発表を歓迎し、26日の取引でGM株は4・8%急騰した。

 一方、大胆なリストラには強い反発も出ている。GMは米金融危機後の09年に連邦破産法の適用を申請し、米政府の出資を受けて立ち直った経緯がある。トランプ米大統領は26日、「気に入らない」と不快感を表明。バーラCEOに「この国はたくさんのことをGMにしてやった。早いうちに元に戻した方がいい」と生産規模の維持を求めたことも明らかにした。

 生産停止の対象工場があるオハイオ・ミシガン両州は、ラストベルト(さびついた工業地帯)の中心地。20年大統領選での再選を目指すトランプ氏にとって最重要地域で、今後も「口先介入」を繰り返す可能性がある。

 生産停止した工場を閉鎖するかどうかは労働組合との協議次第という。全米自動車労組(UAW)のゲイリー・ジョーンズ委員長は「労務費がもっとも安い場所を探し求める、反労働者的な考え方は捨て去るべきだ」とGMを批判。法廷闘争などで徹底抗戦する構えだ。(ニューヨーク=江渕崇)

asahi.com(2018-11-28)