36校中35校が修学旅行でスキー、県議が苦言

 佐賀県立高36校中35校が修学旅行でスキー体験を選択し、海外は1校のみ――。こんな集計結果が、県議会で報告された。議員からの「もっと海外にも目を向けてはどうか」との提案を受け、県教委は各校での議論を促す考えを示した。


 県教委学校教育課がまとめた2017年度の実施状況によると、行き先は、北海道19校、関東甲信越15校、関西2校と分かれたが、35校がスキーを含んでいた

 修学旅行でのスキーは、30年ほど前には既に行われていたという。観光中心から体験重視に変化する中で、温暖な気候の県内では楽しむ機会の少ないスキーが選ばれるようになったとみられる。

 スキーを選ばなかったのは杵島商(大町町)。16年度まではスキーを実施していたが、キャリア教育に力点を置いた内容に変更した。

 海外を選択したのは佐賀商(佐賀市)グローバルコースの約50人。県立高校では6年ぶりの実施となった。同コース以外の生徒約190人は北海道でスキーを体験した。

 海外旅行は、1998、99年度は半数近い16校が実施していた。しかし、米同時テロがあった01年度はゼロになり、その後も新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)やノロウイルス、燃油価格の上昇に伴う旅費の高騰なども重なり、1〜10校に。09〜11年度は佐賀商だけで、12〜16年度はゼロだった。

 安全確保や旅費の負担軽減に配慮した結果だが、公益財団法人全国修学旅行研究協会の調査では、16年度に海外修学旅行が実施されていないのは、福井、岐阜、佐賀の3県のみ。福岡は24校、熊本は8校、長崎は7校など、九州内の各県でも複数の高校で実施された。

 18日の県議会文教厚生常任委員会で、集計結果を聞いた原田寿雄議員(自民)が「ほとんどが同じというのはどうか。海外だから旅費が高いとは一概に言えない。若い時の経験は有意義で、積極的に取り組んでほしい」と提案した。

 これに対し、白水敏光教育長は「異文化を体験して尊重する態度を養い、海外留学への動機付けにもなる。教育的効果が期待できる貴重な機会」と認め、「課題を克服した他県の事例を情報提供したい。各学校の事情はあるが、海外も選択肢に入れ、議論していただきたい」と答弁した。

 同協会の調査では、修学旅行とは別に、海外研修の実施状況もまとめている。16年度、県内では5割を超える20校で実施され、220人が参加。実施率は全国平均の約2割を大きく上回っている。(内村大作)

The Yomiuri Shimbun(2018-09-22)