ホンダ、狭山工場を一転存続へ 基幹部品の生産継続

 ホンダは2021年度をメドに閉鎖する方針だった狭山工場(埼玉県狭山市)を存続させる方針を固めた。四輪車の生産は寄居工場(同寄居町)に集約するものの、22年度以降も関連する一部の部品生産は当面狭山で続ける。燃料電池車(FCV)などの先端車両を生産し、基幹部品に詳しい人材を抱える狭山の機能を残すことが、競争力維持には必要と判断した。

 狭山工場は1964年に稼働を開始した。現在の生産能力は年25万台ある。ホンダが国内に持つ四輪工場は狭山のほかに寄居、鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)と子会社の工場があり、合計の年産能力は106万6千台。ホンダの国内販売は年70万台程度で推移しており、輸出分と合わせても国内工場の稼働率は70%台にとどまっていた。

 ホンダはこの過剰な生産体制を解消するために17年10月、狭山工場での四輪生産を21年度までに終え、寄居に集約する方針を発表していた。

 一方、13年に稼働した寄居はホンダ最新鋭の工場で年産能力は狭山と同じ年25万台。ホンダは寄居を電気自動車(EV)など電動車生産の「マザー工場」と位置付ける。効率的な電動車両の生産に向けた実証ラインも新設する予定だ。

 ただ狭山はハイブリッド車(HV)の生産を手掛けてきた。現在も最上級セダン「レジェンド」や主力セダン「アコード」のほか、ミニバン「オデッセイ」といったHVを生産する。次世代車と位置づけるFCVやプラグインハイブリッド車(PHV)の「クラリティ」シリーズも生産している。

 狭山ではエンジンや大型プレス部品、FCVやPHVなどに関連する基幹部品をホンダが内製している。狭山に残す具体的な品目は明らかになっていないが、部品を手掛ける人材がそのままとどまる可能性もある。先端車両の生産ノウハウが蓄積されている狭山を22年度以降もホンダの工場として操業を続けることが、自社の生産技術を強化する上でもプラスになると判断したもようだ。

 地域経済へのメリットも大きい。狭山工場には約4千人の社員がいる。ホンダは狭山閉鎖後は全員の雇用を維持しつつ、寄居など別の工場に異動させる予定だったが、一部は引き続き狭山に残ることとなる。周辺には関連する部品メーカーも多い。一部とはいえ、ホンダとしての工場機能が残ることの意味は大きい。

 ホンダは03年にもエンジン部品を生産していた旧和光工場(埼玉県和光市)の跡地に国内営業の本社機能を設けるなど地域への配慮を重視してきた。

 一方で狭山工場は敷地面積が約38万平方メートルあり、四輪生産の寄居集約に伴い、大部分の土地や建物は不要となる。今後、跡地をどう活用するかについては地元と立ち上げる協議会などを通じて方針を決める。

nikkei.com(2018-07-29)