ホンダ、ハイブリッド機構を刷新 次期フィットに

 ホンダが2019年に全面改良する主力小型車の次期「フィット」で、ハイブリッド車(HEV)機構を刷新する。現行の1モーター式を、燃費性能が高い2モーター式に切り替えることが日経 xTECH/日経Automotiveの調べで分かった。小型車分野で2モーター式を投入するトヨタ自動車を猛追する。

 ホンダは現在、3種類のHEV技術を実用化している。フィットや「ヴェゼル」など小型車に1モーター式「i-DCD」、「アコード」など中型車に2モーター式「i-MMD」、「レジェンド」など大型・高性能車に3モーター式「SH-AWD」――である。このうちi-MMDを改良し、次期フィットに採用する。1モーター式i-DCDの今後の使い方は「検討中」(ホンダ関係者)。

■エンジンを「ダウンサイジング」

 ホンダが2モーター式をフィットに採用できるのは、課題だった高いコストを1モーター式の水準に削減するメドが立ったことを意味する。17年末、2モーター式のコスト削減を実現する布石を打っていた。北米で発売した「クラリティ」のプラグインハイブリッド車(PHEV)である。

 現行フィットのHEVに載せる排気量1.5Lガソリンエンジン「LEB」を流用し、従来2.0Lだったi-MMDエンジンを小排気量にした。コストを抑えたうえで、摩擦損失を減らして燃費性能を高められる。

 ホンダは16年に一部改良した「オデッセイ」で、i-MMDの主要部品であるモーターやインバーターの大幅な低コスト化を実現している。同じく主要部品の電池は、電気自動車の活況を背景に価格が下がる一方だ。残るエンジンを「ダウンサイジング」したことで、2モーターHEVの大幅な低コスト化を実現する。

 ホンダが次期フィットに先駆けて、低コスト化技術を導入したi-MMDを採用するのが、18年後半に北米で発売するHEV「インサイト」である。ホンダが公表した燃費性能は、米環境保護局(EPA)基準の市街地モードで55マイル/ガロン(約23.4km/L)に達する。インサイトと競合するトヨタ「プリウス」(標準仕様)の54マイル/ガロン(約23km/L)を上回る。最高出力は約113kWで、プリウスの90kWを超える。

■2030年の主流はハイブリッド

 HEVは、2020年代の自動車パワートレーンで主役になる。英IHSマークイットの予測で、低出力モーターを使う簡易式を含めたHEV市場は、30年に20年比4倍超の4000万台超に達する。


 現在の主役であるガソリン車市場に匹敵し、900万台近くに達するPHEVと合わせるとガソリン車を越える。HEV・PHEV市場の成長を見込み、ホンダは30年に世界販売台数の3分の2を電動車両にする計画だ。低コスト化した2モーターHEV機構を中軸に、目標達成を狙う。

(日経 xTECH/日経Automotive 清水直茂)

[日経 xTECH 2018年6月5日付の記事を再構成]

nikkei.com(2018-06-21)