ホンダジェット、セスナ主力機抜き首位 17年納入機数
20機増の43機

 ホンダのビジネスジェット機「ホンダジェット」の2017年の納入機数が前年比20機増の43機となり、米セスナを抜いて初めて首位となった。ビジネスジェット市場は世界的に成長が鈍化しているが、ホンダジェットが含まれる「超小型機部門」は前年と比べ需要が5割増。ホンダにとっては苦戦が続くF1に代わるブランド戦略の柱となる。自動車などに続く収益源に育てる考えだ。

 全米航空機製造者協会(GAMA)が21日(日本時間22日未明)にまとめた集計で明らかになった。

 ビジネスジェット機全体では676機で前年比1.3%増。3年ぶりに増加に転じたが需要がピークだった2008年と比べ半減している。

 その中で超小型機はパイロットも含めた乗員が10人未満で、北米や欧州では主に都市間の移動に使われる。小回りの利く交通手段として、富裕層が個人所有するほか企業や航空機の運航会社向けに需要が伸びている。

 ホンダジェットは15年末に米連邦航空局(FAA)の認証を取得して事業化した。すでに100機以上の受注を抱えていたが、実質初年度となる16年は生産のノウハウが不足し、納入機数は23機にとどまった。17年はセスナの主力機「サイテーションM2」の39機を上回り、機種別で初めて年間首位となった。

 ホンダジェットはビジネスジェットの世界最大の市場である米国に生産拠点を持つ。17年は主力の北米市場がけん引したのに加え、欧州でも大きく納入機数を伸ばしたという。個人向けと法人向けの納入機数は「半分ずつ程度」としている。

 当初は米パイパー・エアクラフトと提携して手薄な販売やサービスを委託する方針だったが自社で販売網を展開する戦略に転換。実績のある米企業から営業担当を引き抜くなどして販売体制を整えた。

 7人乗りのホンダジェットの最大の特徴はエンジンを主翼の上に置く独特の設計にある。胴体にエンジンを取り付ける競合機と比べて室内空間を広く取れ、騒音も小さい。

 世界的なガソリン高も販売を後押しした。ホンダジェットは世界の航空機メーカーでは唯一、ジェットエンジンも自社で供給しており、燃費性能が競合機と比べて最大2割ほど高い。

 ホンダは1986年に極秘裏にジェット機とジェットエンジンの開発に着手した。航空機参入は創業者である本田宗一郎氏の幼少時代からの夢だった。航空機のノウハウがないため開発は難航したが、2006年に事業化方針を決定。当時社長だった福井威夫氏は「F1に変わるブランドリーダーとしての役割を期待した」と述べている。

 ホンダジェットのカタログ価格は450万ドル(約4億8000万円)。単純計算で年間売上高は200億円程度。

 ホンダは主力の自動車のほかに二輪車と汎用機の主要3部門を抱える。航空機の売上高は小さいが、未参入の日本でもテレビCMに起用するなどブランド構築の面で貢献し始めている。

 ホンダジェットは主力の北米のほか、近年はアジア市場への進出に力を入れている。2月に開催されたシンガポール航空ショーでは過去最大となる16機の受注を決めた。年内に米ノースカロライナ州の工場で生産機数を月4機から5機に引き上げて旺盛な需要に応える構えだ。

 日本の航空機産業は戦後すぐにGHQ(連合国軍総司令部)によって生産・開発を禁止された「空白の7年間」などのため、米国などと比べて大きく出遅れている。1962年に政府主導の民間機「YS―11」が初飛行したが頓挫した。関連企業は米ボーイングなどの下請けの地位に甘んじてきた。

 近年では三菱重工業がリージョナル機「MRJ」で再参入を狙っているが相次ぐ開発延期で苦戦している。ただ、脚部のランディングギアを製造する住友精密工業がホンダジェットへの納入実績を機にドイツ社への直接納入を決めるなど、「日の丸ジェット」の再建が関連産業を底上げするとの期待が高まっている。

《追記》
☆本田技研工業情報 「「HondaJet」が2017年通年でカテゴリートップのデリバリー数を達成」ここをクリック

nikkei.com(2018-02-22)