使い勝手、利便性の向上を実感 ホンダN−BOX

 ホンダの軽ワゴン車N−BOXが、フルモデルチェンジをして2世代目となった。2011年に発売された人気の初代の良さを継承しながら、さらに使い勝手や利便性を向上させている。

 新型になっても外観はほとんど違いがわからないほど、初代の形の印象を受け継いでいる。軽自動車であるため、全長と全幅は変えようもないが、全高が2センチメートル高くなった。また、最低地上高が初代より5ミリメートル低くなっており、そのぶん、室内の天井が高くなっている。

 運転席に座ってまず感じたのは、その天井の高さだった。フロントウィンドーも大きく、前方が見やすい。また、斜め前の視界を改善するため、窓の支柱も細くなった。一方、万一の衝突の際の安全は、車体で衝撃力を分散する構造を採り入れたという説明だ。


 近年普及が広がる安全運転支援システムのホンダセンシングは、ホンダの軽自動車として初採用され、新型N−BOX全車種に標準装備されている。

 試乗をしたのは、自然吸気エンジンのG・EXと、顔付きを精悍に見せるカスタム仕様のG・Lターボである。

 まず、G・EXを運転してすぐ、快適性を改善したという新型の乗り味が伝わってきた。静粛性も優れ、また、路面の凹凸などを乗り越えた際の衝撃の少なさもわかる。より上質な軽ワゴン車になったとの印象を受けた。

 一方で、クルマがふらつき気味であるのが気になった。天井が高くなったことによるためか、車体上部に重心があることが感覚的にもわかり、それで車体が傾き、ぐらっとするのだろう。この傾向は、実は新型N−BOXだけに限られることではなく、人気の背の高い軽自動車に共通した現象である。

 前型のN−BOXでは、確かな手ごたえの運転感覚があり、新型は、より高くなった背の高さと、乗り心地をよりよくしたという狙いが、走行安定性の面でマイナスに働いたのではないか。そうした車体の揺れるような動きは、発進で後ろに車体が傾き、ブレーキをかけた時には前へ沈み込むという反動も起こさせている。

 カスタムのG・Lターボは、ターボチャージャーによる過給で加速の勢いが増すため、明らかに標準のN−BOXに比べ、手ごたえがしっかりしている。ただし、路面の凹凸やうねりがある場合に、車体の上下動の収まりがやはりよくない。船が波に揺られながら進んでいるような感覚に陥る。

 使いやすさにも配慮している。G・EXに採用されたスーパースライドは、助手席を前後に57センチメートルも位置を移動調整することができる。例えば、前方にスライドすれば、子供を後席のチャイルドシートに乗せた後、運転手はそのまま車内を歩いて運転席に座ることができる。


 座席はクッションに厚みがあり、ゆったりと座ることができる。後席の空間の広さは、近年の軽ワゴン車ではいずれも同様であるものの、足元が広々としてとても軽自動車とは思えない、ゆったりとした居心地を味わえる。

 初代の成功を継承し、使い勝手や利便性の向上は実感できるが、走行中の安心をより高める改善が、今後は期待されるところである。



yomiuri.co.jp(2017-09-14)