F1は「挑戦の象徴」 ホンダ、継続意義示せるか

マクラーレンと提携解消、伊チームにエンジン供給へ

 ホンダは自動車レースの最高峰、フォーミュラ・ワン(F1)で英レーシングチームのマクラーレンとの提携を2017年で解消すると15日、発表した。18年からはイタリアのトロロッソと組みF1には残留する。モータースポーツ人気が低迷し、電気自動車(EV)などの次世代車の開発にも追われる中でホンダはF1継続の意義を示せるか。

 「志半ばで袂(たもと)を分かつのは非常に残念だ」。ホンダの八郷隆弘社長は15日、コメントを発表し、無念さをにじませた。

 ホンダは15年にマクラーレンへエンジンなどのパワーユニット(PU)を提供する形で4度目のF1参加を果たした。長期間にわたるF1への参加を念頭に、栃木県内に専用施設を新設するなどこれまで以上に力を注いできたが、第4期は3年目に入ってもいまだ優勝はゼロだ。

 現在のF1は環境技術に重きを置いたルールを敷く。排気量1600ccまでの小型エンジンにハイブリッド技術の複雑な組み合わせが必要でハードルは高い。ホンダのPUのパワー不足が指摘され、トラブルからのリタイアも多かった。マクラーレン・ホンダの現在の製造者部門ランキングは10チーム中9位と低迷。結果を残せないことに今年6月の株主総会でも不満の声があがった。

 マクラーレンはホンダに見切りをつける形で18年から仏ルノー製のPUを新たに採用する。ホンダのF1残留も危ぶまれたが、逆にトロロッソがPUをルノーからホンダに切り替えることで落ち着いた。

 ホンダにとってF1の経営上の目的は揺らいでいるように見える。同社はEVや自動運転車といった次世代車の開発を急ピッチで進めている。2018年3月期の研究開発費は前期比9.4%増の7500億円で増額幅で全国トップ。松本宜之専務取締役(本田技術研究所社長)は「かなりの資源を電動化に振っている」と明かす。F1にかかるコストは年数百億円規模とされ、ホンダにとってもその負担は重い。

 ブランド戦略上の役割も変わりつつある。モータースポーツの人気は世界的に低迷しており、16年のF1日本GP(グランプリ)の入場者数は14万5000人と過去最低を記録した。一方で電気自動車(EV)による「フォーミュラ―E」が急速に存在感を高めている。

 だがホンダは今後もF1にこだわる構えだ。トロロッソは若手主体のチームだが実力をつけている。現在の製造者部門ランキングは6位とホンダより上位にあり、八郷社長は「若さと勢いがある。共にチャレンジできることをうれしく思う」と評する。F1では複雑になったエンジンのルールを21年以降には見直す動きもあり、ホンダの再起につながるか注目される。

 ホンダにとってF1は譲れない「挑戦」の象徴だ。1962年、創業者・本田宗一郎が参加を表明したのは、当時車メーカーの乱立を防ぐために国がホンダの四輪参入を制限しようとしたことに対し、「自分たちもできる」という姿勢を見せつけるためだった。

 だが押し寄せる次世代車の波でホンダが挑戦せざるを得ない領域は広がる一方だ。30年までに世界販売の3分の2をEVやハイブリッド車(HV)など電動車にする方針だが、独フォルクスワーゲン(VW)など世界大手との競争は激化の一途をたどる。F1を継続する意義は何か。まずは「勝利」という結果で示すしかない。
(古川慶一)

《追記-1》
☆本田技研工業情報 「McLaren-HondaのF1レース活動について」ここをクリック

《追記-2》
☆本田技研工業情報 「Scuderia Toro Rossoへのパワーユニット供給を決定」ここをクリック

nikkei.com(2017-09-16)