ホンダ、晴れぬ「軽」快走 実用と走りの両立なるか

N−BOX初の全面改良

 ホンダは31日、主力の軽自動車「N―BOX」を全面改良し9月1日に発売すると発表した。7月の新車販売ランキングで首位になるなどホンダ最大の人気車N―BOX。だがその人気ゆえ「軽のホンダ」の印象が強まり、今秋にはシビック再投入でブランド再建に乗り出す。実用の「軽」と走る楽しさを同時に追う戦略からホンダの抱える悩みが透けてみえる。

 31日に都内のホンダ本社で披露された新型N―BOX。デザインは初代の路線を踏襲したが中身は違う。構成部品の9割を見直し安全性能も大幅に進化させた。車重1トン程度の軽で80キログラムの軽量化も実現。開発責任者を務めた本田技術研究所の白土清成氏は「使い続けたのはボルトなどの基本部品くらい」と話した。

 N―BOXは2011年12月、不振だった軽自動車を立て直すため投入したモデルだ。鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)に軽の開発、購買、生産、営業の機能を集約。客の声を即座に改良に反映できる体制を築き完成度を高めてきた。初代はホンダ最速で累計販売が100万台を突破する大ヒットとなった。

 ただ軽は日本独自の規格に基づく地域限定モデル。市場の縮小傾向が続く日本でどんなに人気があっても、世界でそのまま売ることはできない。予想以上のヒットが国内での「ホンダ」のイメージに与えた影響も大きかった。国内の車種構成が販売台数の見込める軽やミニバン中心となり、走りを求める従来のホンダファンはSUBARUや輸入車など特徴のある他ブランドに流れた。

 9月29日には米国などでヒットした世界戦略車「シビック」を国内で再投入する。国内販売をいったん終了していた往年の看板車種だ。国内営業担当の寺谷公良執行役員は「軽やミニバンだけじゃないホンダを知ってほしい」と話す。だが今の国内販売を支えるのは実用重視のN―BOX。31日の発表会で寺谷氏は「走りと実用性の二つのイメージをブランドとして育てたい」と強調した。

 世界販売で7位のホンダ。順位は10年前と同じでも、競争の環境は大きく変わりつつある。押し寄せる自動化や電動化の波を受け、自動車業界ではトヨタ自動車とマツダが資本提携を決めるなど合従連衡が相次ぐ。

 八郷隆弘社長は「他の自動車メーカーと資本を持ち合う考えはない。エンジンや車台の共通化を進めれば似通った車が増えて『ホンダらしさ』が失われる」という。だがホンダの年間販売は500万台と1千万台クラスの大手に比べ半分だ。限られた経営資源の配分がこれまで以上に重要になってくる。

 販売台数は少なくてもスポーティーな車などに特化したメーカーは世界で強固な顧客基盤を持つ。ホンダはこうした小規模メーカーとも違う戦略を描かなければいけない。中国の新興メーカーも交えた競争が激化するなか「ホンダらしさ」をどう打ち出すかが改めて問われる。(若杉朋子)

《追記》
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nikkei.com(2017-08-31)