「空飛ぶクルマ」開発競争 米欧で2020年にも登場?

 米欧の新興企業が「空飛ぶクルマ」の開発に力を入れている。配車サービスの米ウーバーテクノロジーズは25日、2020年までに空飛ぶタクシーの試験飛行をめざすと発表。スロバキアの企業も同年までに空飛ぶ車を初出荷する計画を掲げる。1980年代のハリウッド映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場した空飛ぶクルマが現実のものになるかもしれない。

■スロバキアの空飛ぶ車は1億円超

 ウーバーのジェフ・ホールデン最高製品責任者(CPO)が米テキサス州ダラスで開いたイベントで、空飛ぶタクシーの計画を明らかにした。ブラジルの航空機大手、エンブラエルなどと組み小型の垂直離着陸機を開発する。20年までにダラスと、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで試験飛行し、23年までに本格的に飛行する計画だ。

 英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)によると、ホールデンCPOは「(空飛ぶタクシーは)ボタンを押せば飛べるようにする」と述べている。ウーバーは昨年10月、新たな交通サービスとして空飛ぶタクシーの構想を発表していた。

 欧州でもベンチャーの動きが活発だ。スロバキアのエアロモービルは20年までに空飛ぶクルマを売り出す計画。ロイター通信によると、価格は100万ドル(約1億1000万円)以上で、スイッチを入れ3分以内に飛行モードに切り替わる。涙のようなユニークな形状で、道路では翼を折り畳んで走行することも可能だ。同社は「飛ぶには離陸の認可がある場所のほか、運転免許とパイロットの免許が必要になる」とみる。

 一方、ドイツに拠点を置くリリウムは5人乗りの空飛ぶタクシーの開発を進めている。試験飛行では2人乗りの試作機が空中で静止するホバリングなどを実施した。

■自動運転車との融和も

 エンブラエルがウーバーと組むように、航空機大手が自動運転技術をもつ企業に接近するケースも広がる。

 欧州エアバスは4月中旬、傘下のベンチャーキャピタル(VC)エアバス・ベンチャーズを通じ、自動運転サービスのベストマイル(スイス)に少額出資した。ベストマイルは欧州トップクラスの技術系大学、スイス連邦工科大学ローザンヌ校発のベンチャー。自動運転車と、周囲の交通情報に関した運行データをクラウドで管理し、スイスでの自動運転バスなどで実績がある。

 エアバス・ベンチャーズのマシュー・レペラン氏は「運行管理はモビリティーシステムを最適化するのに不可欠だ」と出資の理由を語る。航空機メーカーが陸と空をまたぐプラットフォーム(基盤)づくりに携わる時代がやってくるかもしれない。

 日本では自動車メーカーなどの動きが報じられるが、具体的に空飛ぶクルマの実用化の目標年を示した動きはみられない。一方、ウーバーが試験地に選んだドバイでは、行政が積極的に関与して、ドローン(小型無人機)のような1人乗り小型機を使った空飛ぶタクシー構想がある。

■移動サービス「陸と空」の垣根低く

 日米欧の自動車大手が自動運転車の実用化のめどとして示すのが20〜21年。ウーバーなどの空飛ぶクルマの目標時期と重なる。両者の融和が進めば、人の移動(モビリティー)を巡る「陸と空」の垣根は低くなる。まさにバック・トゥ・ザ・フューチャーに登場した空飛ぶクルマ「デロリアン」の世界だ。

 もっとも実際に公道などを走行するためのルールづくりは未着手なケースが多い。消費者に安全性や利用する利点を理解してもらうことも必要だ。ビジネスとして“離陸”するには、乗り越えるハードルはまだ多い。
(加藤貴行、池田将)

nikkei.com(2017-04-26)